“ヒーロー”が女子で大ヒット110億円! 『ワンダーウーマン』が覆したマーケティング
ゴレンジャーでピンクが紅一点のヒロインだった時代はとうの昔。今は女子が“ヒーロー”で映画が売れる! マッチョなスーパーヒーロー『アイアンマン』を抜く売上1億ドル超えを、女子が主役のアメコミシリーズ最新作『ワンダーウーマン』が打ち立てた。
女性だけの島で育ったアマゾン族のプリンセスが、ワンダーウーマンとなって正義の鉄拳で悪をなぎ倒す、DCコミック原作の女性戦士物語。
いわゆるアマゾネスもの、レスボス島ものをベースに、第二次世界大戦中に生まれたキャラクターで、“ジャスティス・リーグ”唯一の女性ヒーローでもあるワンダーウーマン。1970年代に始まったドラマシリーズで主演のリンダ・カーターが纏ったコスチュームは、アメリカの視聴者だけでなく世界中のデザイナーに影響を与えてきた。
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そんな伝説の物語『ワンダーウーマン』の最新バージョンが6月2日に全米公開をスタートさせたところ、なんとたった3日で1億50万ドル(約110億円)を記録してしまったというから、世界中が驚いた。というのもこの記録、数あるアメコミヒーロー第一作目として、『アイアンマン』の9861万ドル、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』6510万ドル、『マイティ・ソー』の6570万ドルも軽々と抜きさってしまうもの。さらに『キャプテン・アメリカ』に関して言えば、続編『ウィンター・ソルジャー』の記録(9502万ドル)をも超えてしまっている。
1975年から始まったドラマシリーズが、1966年にパイロット版となるショートムービーを制作してから、再パイロット版のABCテレビムービーをはさみ、シリーズ化されるまでに約10年の時を要したように、今回の映画『ワンダーウーマン』も御多分にもれず「女性が主役のヒーローものは売れない」というネガティブな意見と偏見が常についてまわっていた。
ところがフタを開けてみたら大ヒット! アメリカ以外の55か国でも1億2250万ドル(約134.7億円)の快挙を達成。見事に偏見を覆した。
しかもこの作品は監督も女性で、女性監督としての全米売上を大きく塗り替え、通常のヒーローものの観客男女比(=6割男性)をひっくり返し、5割強を女性が占めるという結果に。「エンタメ映画を観るのは主に男性→女性主役は売れない(除くエロもの)→女優のギャラは相対的に低額」という旧来のマーケティングをベースに進んでいた映画業界の“常識”に憤懣やるせない思いをしていた女優達も、この結果に満足している様子。
内容的にもこの作品は最初の3日間で「ロッテントマト」の批評家・観客の両者から93%以上の支持を獲得するなど高評価。それだけでなく、内容的にもハリウッドの女性たちからも劇中の女性の描かれ方を含め支持され、ルピタ・ニョンゴはプレミア後「みんな走って観に行って! #PromotionFromTheHeart(心からの売り込み=仕込みじゃないよ)」とインスタグラムに長文を投稿。それを受けジェシカ・チャスティンは「女子のみんな! ルピタのインスタを読んで観に行って!」と投稿すると、アン・ハサウェイが「ジェシカの言うとおり! ハリウッドのみんなが自信をもって女性中心に映画を作っていいんだって思ってほしい」とリレー方式で私的SNSプロモーションを展開した。
日本公開は残念ながら8月25日(金)と、2か月強も先。公開も楽しみだけれど、兵役に就いた経験もあるイスラエル出身のガル・ガドットが“本物のアクション”と美貌を武器に、『ワンダーウーマン』で今後「もっとも稼ぐ俳優ランキング」にどう入り込んでくるかにも要注目。