特集 2015/3/31(火)
世界のおやつ from Bologna / Mari

期間限定! “イタリア菓子職人の父”が作るパスクアのお菓子「コロンバ」

サン・ヴァレンティーノ(San Valentino:バレンタインデー)」や「カルネヴァ―レ(Carnevale:謝肉祭)」、「フェスタ・デッラ・ドンナ(Festa della donna:女性の日)」といった気持ちを春めかせてくれるイベントが矢継ぎ早に過ぎ去ったあと、イタリア人に本格的な春の訪れを告げてくれるイベントがパスクア(Pasqua:復活祭)。人々の罪を背負って十字にかけられたイエス・キリストが3日目に復活したことを祝うキリスト教の世界ではとても重要な行事です。今回はそんなパスクアに欠かせないイタリアンドルチェをご紹介します。

毎年、「コロンバ」作りはパスクアの3週間前ごろから始まり、4種類の中でも販売の8割を占めるという一番人気の「クラッシカ」から着手します。ジーノさんは菓子作りの基本は材料だと考えており、マーガリン、代替品、化学添加物、人工甘味料などは一切使用せず、天然の高品質のものだけを使用しています。「コロンバ」作りは1日にならず3日間を要し、1日目に天然酵母を生地にまぜ一晩寝かせ、2日目の朝に2次発酵を行います。そして午前中に生地を「コロンバ」の鳩型にいれて、さらに6~7時間発酵させ、午後にオーブンへ、という手順です。生地が完成した「コロンバ」に最後の仕上げを加えていきます。

グラッサトゥーラ(Glassatura:アイシング)を行うことで、「コロンバ」を口に入れたときのサクサク感を与えると同時に「鳩」を「白い鳩=コロンバ」にします。そして、アーモンドと粒状の砂糖を順に振りかけていざオーブンへ。「コロンバ」が焼けてくるとふわーんと、手放しで人を幸せにする甘くてやわらかい香りが工房中を満たします。

そして50分後、オーブンからでてきた「コロンバ」は手際よく一列にならべられ、鉄の串を差し、さかさまにして2日目の夜を過ごします。3日目の朝にようやく完成となった「コロンバ」は、毎年デザインの違うかわいらしい箱に入ってお客様のもとへ羽ばたいていきます。

ずっしりと重い箱から「コロンバ」を取り出してビニールの包装を開けると、工房にいたときのような芳醇なバターの香りが優しく私たちを包んでくれます。(この状態で、すでに幸せ感いっぱい!)そして「コロンバ」の中を見てみると、スーパーなどで販売している工場生産の「コロンバ」とは比較にならないきれいな黄色をしています。

ふわふわとした「コロンバ」を口の中に運ぶと、しっとりとした、これまたやさしい柑橘の香りとバターの香りのハーモニーが口の中に広がります。どうやってこのやわらかな香りを生み出すのかというと、柑橘類を一晩ココアバターの中に浸しておくのだとか。ジーノさん曰く「おいしさとはバランスの中から生まれるもので、何事も過剰であってはいけない」と。そして「その繊細な香りを感じるためには適度な湿度が必要」だともおっしゃっています。「コロンバ」の仕上げで加えるグラッサトゥーラには水分を逃がさないようにする役割もあるそうです。保存料を何も加えていないジーノさんの「コロンバ」でも焼き菓子のため2~3ヶ月ほどは品質には問題がなく食べることができるそうなのですが、どうしても水分は日を追うごとに逃げていくので、おいしく食べるためには製造日から1ヶ月以内に食べるのがベストだということです。
 
ジーノさんが菓子職人として大切にされている言葉は「優しさ、教育(礼儀正しさなども含む)、尊敬(Gentilezza, Educazione, Rispetto)」。このことを常に心に刻み、伝統をしっかりと理解したうえで品質の良いものを作り続ければ、お客様はわかってくださるとおっしゃいます。そして、どんなに一流のパスティッチェーレになっても、職人の白いユニフォームを脱ぎ去り、お客様の声に耳を傾けるため自らが販売に携わることが非常に大切ともお話くださいました。「おいしいという声だけではなく、お客様からの批判や指摘が菓子職人を成長させ、よりおいしいドルチェを生み出す原動力となる」というジーノさんの言葉は、常に謙虚な気持ちを持ち続けることの大切さを再認識させてくださいました。ジーノさんへのインタビューは、「コロンバ」を深く知るだけではなく、菓子職人としての在り方や、人間として大切なことをたくさん教えてくれるものでした。ボローニャにいらっしゃる際には、旧市街からバスでも行くことが可能ですのでジーノさんの店をぜひ訪ねてみてください。

そこには、ジーノさんが実際に工房で使用している菓子作りの材料や「コロンバ」以外のたくさんのドルチェもあります。その中には2000年に行われた「Torta del Giubileo del 2000(2000聖年のケーキ)」コンクールでジーノさんが優勝をし、当時のローマ教皇であったPapa Giovanni Paolo II(ヨハネ・パウロ2世)に謁見する機会を得た「Torta Giubileo(トルタ・ジュビレオ)」も! 教皇ヨハネ・パウロ2世が召し上がったケーキを、イタリアの菓子職人の父であるジーノさんが直接販売してくださるかもしれません。
 
「コロンバ」 1000g 33ユーロ

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  • Gino Fabbri Pasticcere(ジーノ・ファッブリ パスティッチェーレ)
    Via Cadriano, 27/2, 40127, Bologna, Italia
    Tel. +39-051-505074
    営業時間/7:00~19:00 土曜は~13:00、15:30~19:00(5月から9月は~13:00)
    定休日/日曜、祭日
    http://www.ginofabbri.com/

  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら「フェリチターリア」の通訳・翻訳者、個人旅行同行アシスタントとして、「食の都」ボローニャを中心にイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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