特集 2014/1/6(月)
世界のおやつ from Bologna / Mari

いくつもの名前を持つカーニバルのお菓子「スフラッポレ」

トルテッリーニや、ザンポーネ、そしてパネットーネといった年末年始の食い倒れで「もう何も食べたくない……」と皆が口を揃えていう胃袋も、クリスマスツリーを片付けて、新年の空気を感じれば新しいお菓子のスペースはできるもの。そんな時にボロニェーゼを誘惑するお菓子は、カーニバルのお菓子「スフラッポレ」! 

日本ではクリスマスが終われば、目にも留まらぬ早業でお正月の飾り付けやおせちの準備が始まりますが、ボローニャでは12月初めに街の中心にあるマッジョーレ広場に飾られた巨大クリスマスツリーも年を越します。イタリアのホリデーシーズンはクリスマスまでではなく、1月6日のエピファニア(御公現の祝日)まで続きます。そのホリデー最後の日となるエピファニアに、サンタクロースが登場する以前から年に一度子供たちにプレゼントを持ってきていたのは、怖い顔をしているけれど心根は優しい「ベファーナ」と呼ばれる魔女のお婆さん(写真左)。

サンタクロースからプレゼントをもらう習慣が根付いた今でも、イタリアの子供たちは従来通り1月6日にも靴下を準備してベファーナからのプレゼントを待ちます! 「いい子にしていた子供にはドルチェを、言うことを聞かない悪い子には炭を持ってくる」ということで、この季節になると、なかなか言うことを聞かない子供たちを前に「いい子にしていないとベファーナが炭を持ってくるよ!! 」と子供をたしなめているマンマ続出です。しかし、そう叱りながらも大人たちは子供たちへのお菓子を準備。大小様々なベファーナの人形と共に、炭の形をした砂糖菓子も街の屋台などで販売されています。
 
そんなベファーナの出番が終わったら、イタリア人も重くなった体とどっぷりお休みモードだった気持ちを切り替えて、新年になったことを受け入れ始めます。
 
新しい季節には新しいお菓子がつきもののイタリア。そんなイタリアで新年に出てくる最初のお菓子と言えばカーニバルのお菓子「スフラッポレ」。名前を聞いただけでも、体が「ふわふわっ」と飛び跳ねてしまいそう! どんなお菓子かと言うと、地方によって材料や形成に少々バリエーションがありますが、基本的には、小麦粉、砂糖、卵、バターなどにお酒を少々加えたものを揚げ、仕上げに粉砂糖をたっぷりと振りかけたもの。

街では、お店の店頭にこんな感じで並べられています。「スフラッポレ。カーニバルのサイン! ――ほんとうに、美味――」や「上等なスフラッポレ:油っぽくなくって、とってももろくって、薄くって、軽い」など……。

こちらには、「今日はスフラッポレ 1kg 30ユーロ。ひとつひとつ麺棒でのばして私たちが手作りしています!」と書かれていたりして、いろんなお店が自分たちのスフラッポレの素晴らしさをアピールしています。こんなショーウィンドーを楽しみながら買うもよし、お家で作るもよし。

材料も作り方もシンプルなので手慣れたイタリアンマンマは大量に手作り。2月のカーニバルまでまだ1か月以上もありますが、そんなことはお構いなし。この時期に家を訪ねてくるお客様にスフラッポレを振る舞って、どんどんお祭り気分を先取りです。
 
さて、このスフラッポレ、イタリアの各地方によって、様々な名前で呼ばれています。
 
ボローニャでは「スフラッポレ(Sfrappole)」、ミラノやシチリアなどでは「キアッキエレ(Chiacchiere)」、フィレンツェでは「チェンチ(Cenci)」、ローマでは「フラッペ(Frappe)」、などなど枚挙にいとまがありません。

肝心のお味はと言いますと、本当に美味しいものは先述のお店のコメントのように、口に入れた瞬間に「さくっ」と軽く、たっぷりとかかった粉砂糖と相まって口の中で溶けてしまう感じ。揚げ菓子なのに全く重くなく、怖いくらいに手が伸びてしまいます。ふわふわっとした形状なので大量にあるように見えますが、一瞬のうちにお皿が空っぽになってしまいます。
 
スフラッポレを味わえるカーニバルのお祭りはイタリア全土で開催されます。
日本で有名なヴェネツィアは、マスクをつけて、貴族のように華やかに着飾った人々でいっぱい。

毎年カーニバルのために、前年のカーニバルが終わった直後から、次の年のための衣装制作に取り掛かる人も多く、仮装する人の気持ちはさながら紅白歌合戦出場歌手のようなものかもしれません。
 
また、日本ではあまり有名ではないけれど、ボローニャ近郊でカーニバルが有名な都市と言えば、チェント。カーニバル期間中、チェントの町は封鎖され、中に入るには入場料が必要です。

有料なだけあり、名物である沢山の山車からは、いろんなプレゼントが集まった人々に投げられます。また、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロと姉妹都市でもあるため、リオのカーニバルのような雰囲気も味わえます。
 
そしてわが町、ボローニャはというと、毎年子供のためのカーニバルが行われます。各教区が準備した山車に子供たちが乗って町のメイン通りを練り歩き、マッジョーレ広場までやってきます。

男の子はスーパーヒーロー、女の子はお姫様、ちっちゃな赤ちゃんはてんとう虫など、みんな可愛らしい仮装をして登場です。子供たちの楽しむ笑顔を見るだけで、付き添っている大人たちにも自然に笑みが溢れます。ヴェネツィア、チェント、そして、他にもヴィアレッジョなど、ボローニャから日帰り圏内にカーニバルで有名な都市が沢山あるので、スフラッポレ片手にカーニバル巡りなんてのも素敵ですね!

  • Mari●大手経営コンサルティング会社にて経営コンサルタントとして勤務後、2006年に渡伊。2人の男の子のマンマをしながら、「フェリチターリア」の通訳・個人旅行同行アシスタントとして、「食の都」ボローニャを中心としたイタリアの魅力を発信中。
    http://www.felicitalia.net/

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