リトアニアってどんな国?
美しい手仕事が生きる暮らし
「森に囲まれていて自然が豊かで、そしてかわいいものがいっぱいある国!」。リトアニアに行ったことがある人からこんな話を聞くが、いったいリトアニアって、どんな国なのか。まずは「古き良きリトアニア」を知るために、リトアニアの中央部にある街、Kupiskio(クピシュキス)のクラフトセンター、Uoginiu Amatu Centras(ウオギニウ・アマトゥ・セントラス)を訪ねた。「ようこそ!」と出てきたセンターのスタッフは皆、民族衣装に身を包み、「歓迎のダンス」でお出迎え。まるでおとぎの国に来たよう。
パン焼き小屋に入ってみると、温かみのある道具がずらり。ぽってりした陶器や、パンを焼くための木の道具は、どれも昔ながらのものばかり。「リトアニアはライ麦パンが主食。大きなパンを窯で焼いて家族みんなで食べます」とスタッフの一人。食べ物を作る場所はとても神聖なところ。パン焼き窯は部屋を暖める暖房の役割もする。「昔はバターも手作りでした。今はスーパーで買えるけれど、でも、ゆっくりおしゃべりをしながらパンをこねたりバターを作ったりするのは、大切なコミュニケーションでもあるのです」
別の建物では、リトアニアの生活道具を昔の方法で作っているところが見学できる。麻から糸を紡ぐ様子や、天然の植物からかごを作るところなど、古くから受け継がれた技法で実際に使う道具をせっせと作る様子は、とても楽しそう。「作り方は、母や祖母から教えてもらったの。いまでは手が覚えているから自然に作れます。リトアニアでは、パンが一人前に焼けるようになったらお嫁に行けるとか、かごが編めるようになれば母から認められるとか、よくそんなことを言いますが、何かをちゃんとできるようになるっていうのは本当に嬉しいこと。だから今でもこうしたもの作りはとても楽しい作業なんです」
リトアニアの道具は、どこか温かくて、そしてとびきりかわいい。ぽてっとした形のピッチャーは、水を灌ぐのにも、ビールを入れるのにも使う。「これがかわいい? そうかしら、身近すぎてわからなかったわ」と、リトアニア人は言う。どの家にもかならずいくつかはある必需品なのだとか。ビーズで模様をほどこしたリストバンドは、RIESINESというもので、防寒のためや、おしゃれアイテムとして老若男女を問わず愛用されているもの。テーブルにさりげなく置いてあるフェルトやレースの使い方も素敵だ。
「パンが焼けましたよ。どうぞ」という声でダイニングに入ると、素朴ながらおいしそうな料理が。左は、シュラモーカイというお団子。ライ麦パンの生地を丸めてゆでたものに、ラードと玉ねぎ、サワークリームで作ったソースをかけていただく。「限られた素材でいろいろな料理のバリエーションを作る工夫ですね。ライ麦パンと同じ生地でも、アレンジすれば違う料理に。これは月に一度くらい、つまりパンを焼いたときに食べる料理。これが出ると、あ、今日はパンを焼いたな、って」。右のケーキは、モズラスというもので、小麦粉で作ったサクサクの生地に、赤すぐりとラズベリーのジャムをはさんである。シンプルだけれど、じわっとおいしい。ロシア風という、オレンジのティーポットがまた、かわいい。
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Uoginiu Amatu Centras
http://www.kupiskioamatai.lt/
photos : Yukako Hiramatsu cooperation : Republic of Lithuania State Department of Tourism special thanks : Asami Kuchio