特集 2015/6/2(火)
restaurant Quintessence × Restaurant André 

平野紗季子の食レポ!「物語は厨房にある」

2015年5月23日・24日の夜。6年連続でミシュラン3ツ星に輝く北品川「restaurant Quintessence」の岸田周三シェフと、アジアのべストレストラン50で上位獲得、今シンガポールで最もホットな「 Restaurant André」のアンドレ・チャンシェフによる、スペシャルなコラボレーションディナーが開催された。ダイナースクラブ主宰による世界を代表する才能のハーモニー、一体どんな食体験が待ち構えているのか……? 5月24日のスペシャルディナーに強運で飛び込んだ平野紗季子がレポートします!

岸田シェフの 「Canard en Crépe」。手巻きで食べるフォアグラのクレープ。フレッシュなフォアグラのテリーヌ、鴨の生ハム、キャラメリゼのピーカンナッツなどをくるくるっと巻いて食べる塩梅。北京ダックならぬ東京ダック! アンドレシェフ曰く「岸田シェフの新しい側面、挑戦的な姿勢を強く感じる」と、最も感銘をうけた皿のひとつだそう。

これがもし中途半端なコラボレーションなら、味の殺し合いになっていたかもしれません。だけどあの現場には、過去と未来の間でぎゅっと握手をしあう、リスペクトの熱があったように思えます。だからこそ、全ての料理は祝福に満ち、生き生きと食べ手の心へ届くのでした。「本人たち、厨房で本当に楽しそうに料理をしていました」と、「André」シェフ・ソムリエの長谷川さんも証言!

アンドレシェフによる「Fruit rouge」。スライスした赤ぶどう、ラズベリーのピュレ、ホワイトピーチのスープ。上にはピンクのコリアンダーが散らされる。香りが外へ解き放たれるような華やかさや、きゅっと冷たい清涼感は、熱い国で腕をふるうシェフならではなのだろうか。

昨日レストランの中心にいたのは客ではなく、二人の料理人だったのだと思います。物語は厨房にあって、あくまで食べ手はその物語の目撃者であった。ものすごく美味しいものを食べたとか、珍しいものを食べたとか、それだけじゃない。そこにあるのは、まるでドキュメンタリーを目の当たりにした時の感動、こみあげる情熱、BGMは葉加瀬太郎でいいでしょうか?

右 アンドレ・チャンシェフ。左 岸田周三シェフ。

「Andréでもカンテサンスでも、今日のような体験は二度と起こりません」。最後にアンドレシェフはそう語りました。 「André」には「André」の、「カンテサンス」には「カンテサンス」の体験がある。それは今日のものとは全く違ったものである。アンドレシェフ本人が来日したといっても、「André」本店で味わえる感動を国境を超えて持ち出すことはできません。今回、私が味わったのものは、間違いなく他のどこにもない、一度きりの特別なものでした。
同じ時代を生きながらそれぞれの料理を追い求めてきた二人。昨夜の握手を経て、彼らはまた散り散りばらばらに、それぞれの北極星を目指すのです。

>>ふたりのシェフのレストランを紹介!

  • 平野紗季子さん

    フードライター。1991年、福岡県生まれ。2014年3月、慶応義塾大学卒業。幼い頃から無類の食好きで、食にまつわる発見と感動を綴るブログが話題となり、現在は数多くの雑誌やウェブマガジンで執筆活動を行う。著書に『生まれた時からアルデンテ(平凡社)』がある。ブログはこちら。http://fatale.honeyee.com/blog/shirano/

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photos & text : Sakiko Hirano

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