ファッションで自分の個性を輝かすためのセンスは、仕事にも通じる
吉田:私、大学時代に内定をいただいた会社の面接に行くときに、母が用意してくれた服のことをよく覚えているんです。周りはみんな紺のリクルートスーツだったのだけれど、母としてはそういうのは絶対にダメで、買ってきたのは、ロイヤルブルーのきちっとしたショートジャケットに、紺とグリーンのきれいなフレアスカートでした。「面接官だって人間なんだから、若い女性がきれいな格好をしていたら、うれしいに決まってるでしょ?」って。そんなふうに物事を画一的にとらえず、「相手も人間なんだから」と本質を見ていく母の姿勢は素敵だなと感じましたね。
――いまだに就活のシーンでは紺のリクルートスーツが定番ですし、企業側が依然としてそれを求めているムードもあります。
吉田:残念なことにね。だからといって、鵜呑みにして紺のリクルートスーツを着るのは、違うのではないかしら。当時の私のような服を着ろとは言わないけれど、「本当に紺じゃなきゃいけないんだっけ?」「それが私を表現するベストなカラー?」と自分の頭で考えてみてから選択することは大事です。
仕事とは、自社の商品やサービスの個性を見つけることで競合他社と差別化し、市場でポジションを見つけていくこと。自分の個性を見つけて自らを差別化することもできない人には、商品やサービスを売ることなんてできないと思いますよ。特にビジネスの世界でグローバルに活躍していこうと思うなら、ファッションも没個性ではダメ。
――自分の個性を見つけていくには、どうしたらよいでしょう?
吉田:ひたすらトライ&エラーを繰り返すこと。若いときなんて失敗して当たり前なのだから、仕事服のチョイスも失敗していいんです。洗練というのは生まれたままの姿ではありえなくて、切磋琢磨の中からにじみ出てくるもの。場数を踏むことで見えてくるものは必ずありますよ。
-
吉田 晴乃(Haruno Yoshida) /
BTジャパン株式会社 代表取締役社長
カナダ、アメリカ、日本でモトローラ、NTT、ベライゾンとグローバルICT大手の営業最前線で活躍。その卓越した営業実績は市場の注目を集め2012年に英国最大手通信会社BT(ブリティッシュテレコム)に抜擢され現職。2015年6月より女性としては初の経団連役員に就任予定。シングルワーキングマザー、エクゼクティブ、と複数のわらじをはくグローバルキャリアウーマン。
text: Kaori Shimura