モード界の帝王の光と影を描く、ファッショニスタ必見の話題作
 
今年で22回を数えるフランス映画祭。毎年、多彩なラインナップに、来日ゲストを交え、フランス映画の紹介と交流の場としての役割を担ってきた。そんな映画祭の今年の目玉が、伝記映画『イヴ・サンローラン』だろう。
 
弱冠21歳でディオールの後を継いでデザイナーとなったサンローランは、26歳で自らのブランドを設立。20世紀のファッション史に残るコレクションにより一世を風靡し、ハイブランドとして揺るぎない地位を築いた。映画は、サンローランとパートナー、ピエール・ベルジェとの関係を軸に、天才の光と闇の部分に迫った話題作だ。
 
イヴ・サンローラン財団の全面協力を取り付けたこの映画には、ドレスや宝飾品、スケッチに至るまで、アーカイヴに収められた本物が大量投入されている。また、スタジオやコレクション会場となったインターコンチネンタルホテル、マラケシュの別荘といった舞台を当時の香りと共に再現。そんななか「スモーキング」 「サファリスーツ」「モンドリアン・ルック」 「バレエ・リュス」といった伝説的コレクションのめくるめく誕生秘話が描かれるのだからたまらない。
 
そんな数ある見どころのなかでも成功の鍵を握ったのが、主役二人を演じたコメディ・フランセーズ出身の実力派俳優たちだ。端正な容姿をそっくりに作り込んだピエール・ニネは、サンローランのガラスのハートをも見事に表現し、今やフランスの寵児となっている。
 
ヴィクトワール（シャルロット・ル・ボン） 、ルル・ド・ラ・ファレーズ（ローラ・スメット） 、ベティ・カトルー（マリー・ドビルパン）といったサンローランのミューズや、ジャック・ドゥ・バッシェールを巡るカール・ラガーフェルドとの関係等など。映画ではエキサイティングな人間群像もつまびらかにされ、ファッショニスタのハートをくすぐるサービス満点な作りとなっている。
 
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