「もし、恋人が自分の思い通りに動いてくれたら……」。本気で恋をしたことがある人なら一度は抱く、そんな都合のいい願望が現実になったとき、恋はどんな結末を迎えるのか――。
 
10代のうちに若くして作品が成功を収めることになった小説家、カルヴィンはデビュー作以来、ずっと書けずにいる。話し相手は兄とセラピストだけという孤独な彼は、リハビリのため“大好きな人”について妄想の恋愛を小説にすることになる。理想の女性、“ルビー”について書くうちに、癒されていく日々。ところが、小説の中だけのはずのルビーが突然現実になって現れる。しかも自分が文章に描いた通りにふるまってくれる。理想の女性に本当に恋をしていくカルヴィン。予想外の行動をしたら即、文章を書き加えて修正。そんな都合のいい恋が、ある日思わぬ方向に進みだす……。
 
誰にでもある都合のいい願望がもし叶ってしまったら、人はどうなってしまうのか。そんな命題を、優しくやわらかに描き出し、ロマンティックな恋愛物語に仕上げたのは、『リトル・ミス・サンシャイン』（06）で世界を熱狂させたジョナサン・デイトン＆ヴァレリー・ファリス監督。脚本は小説から飛び出した女性、ルビーを自身で演じた若き才能、ゾーイ・カザン。ギークな役を演じさせたらピカイチのポール・ダノを主演に、アントニオ・バンデラス、アネット・ベニングが脇を固め、上質な映画に仕上がっている。この映画を観て、自分の恋愛を一度見つめ直してみるのもいいかも？