【Vol.1】女性を活かす職場の作り方
働く女性を応援するイベント、「エル・ウーマン・イン・ソサエティ」。6月13日(土)の開催を目前に控え、当日登壇する予定の女性リーダーたちに、女性が働きやすい職場づくりについて訊ねる連載がスタート! 職場から見えてくる“理想の働き方”を追求しようという本企画の栄えある第一回は、ニュースリリースポータル「News2u(ニューズ・ツー・ユー)」の代表取締役会長であり、ツネイシホールディングス専務である神原弥奈子さんの“自慢の職場”が登場。
さまざまなライフステージの受容
―神原さんご自身も独身時代と働き方は変わりましたか?
私自身は“飲みにケーション”は好きではなくて……。独身だったころは私も、とても働いていたので、出前をとって夕食をみんなで会社で食べるという環境でした。ですが、自分たちも子どもを持つスタッフが多くなると、家で家族と食事をしたいということになります。そのためにみんなで努力をして、残業時間を減らしました。
独身で自由な人だけが職場に集まっていると、24時間が自分の時間である人だけが働くことになり、人間のさまざまなライフステージを考えづらくなります。なので、そういった環境にするのは難しいかもしれません。パートナーができた、子どもができた、親が年をとったなど、人にはそれぞれ変化していくライフステージがあるわけなので、私たちは皆で「何がいいのか? どうすれば働きやすいのか?」と考えるようになっています。
スタッフと長く仕事をしていくために
―勤務時間は決まっていますか?
弊社ではもう一社役員をしている広島の製造業の会社では、勤務時間は8時〜17時です。東京の感覚ですと8時出社は早いと思うかもしれませんが、小学生以下のお子さんがいれば、朝食を一緒に食べて、保育園に送って、それから会社に着くと想定したら、決して早い出社時間ではありません。また、17時に退社するわけですから、そこから子どもを迎えにいって、朝食だけでなく夕食も一緒に食べられるんです。
ニューズ・ツー・ユーの場合、基本勤務時間は10時-19時。でも、9時-18時の人もいますし、そのなかでも16時に帰る人もいる。皆でお互いの家庭環境に配慮しながら「どのような形がいいか? どうしたら家族との時間をとれるか?」を配慮しながら考えます。出社時間、勤務時間についても、柔軟に考え、皆で協力できるように努力します。
経営者としてこの形はなかなか難しいとおっしゃる方もいるかもしれません。でもこういったことはルールありきではないんです。「今いるこのスタッフと、どうしたら長く仕事をしていけるだろう?」。そこからスタートしてルールを変えていけばいいのではないでしょうか。
これは私が自慢できるところですが、幣社には出産して戻ってくるお母さんの社員、そして長く働いている社員が多いです。それは、お母さん社員のために何かしようと考えたからではなくて、私は単に彼女たちと仕事がしたかった。だから、「彼女たちが仕事を続けるためにはどうしたらいいだろう?」と考えただけです。一般論にすると難しいことはあると思いますが、仕事にも時間にも“ゆとり”をもたせる。ただそれだけなんだと思います。
―“ゆとり”といえば社長室に大きなぬいぐるみが置いてありましたね。
そうそう、私の部屋には友人の社長がプレゼントしてくれた大きなリラックマがいます。長期出張のときには、私の椅子に代わりに座ってもらってます(笑)
―職場の作り方で気をつけたことはありますか?
社長室のドアを開けている時は、いつでも入ってきていいということにしています。「今は困る」というときにはドアを閉める。ドアを開けていれば声をかけてもらっても構いません。とはいえ大抵部屋に来る前にチャットで「今行っていいですか?」と連絡してきます。受け入れ体制にあることをきちんと社員に表明するということは大事だと思っています。
オフィス自体について言えば、顔が見えるようにしました。ブースにはしませんでした。社長室もガラス張りで、私のことが外から見えるようにしています。逆に視界からなくなりたいときには、コミュニティスペース(フリースペース)を使えばいいわけです。テーブルの向きは好きに変えていいので、背中を向けて視界に何も入らないで集中したい人はそうすればいい。そういう意味でもフリースペースは必要なんです。
男女以前にパーソナリティを尊重
―ご自身のキャリア史上で、女性だからこその困難はありましたか?
評価が実力相当なのか、それとも女性という下駄、というかヒールを履かせてもらっているのかわからなくなった時がありました。20代は一生懸命働いているので、それが実力だと信じていた。今考えると実際は「女のコだから」と、ヒールを履かせてもらって発注をとっている部分もあったと思います。でも30代になり、そのヒールを脱いだとき、自分に本当に経験や実力が伴っているかは大事ですよね。
「下駄履いているな」と感覚をもつのはいいんです。その分、早く実績をつくって、実力をつけていけばいいので……。ヒールが他の人に渡っても、それまでと同じ評価がえられるような力があればいいんです。これは日本でも海外でも、男性にも言えます。男性もそうだと思いますよ。女性だけが制限されているわけではないのではないでしょうか。要は、メリットだと思っていることが、経験のチャンスをなくすというデメリットになったりすることも多々ありますよ。
言い方は難しいですが、“平等”は非常に難しいもの。それぞれの人に、抱えているものが様々ある。その複雑性を容認していくような社会が必要だと思います。皆が横並びではありませんから。多様性や複雑性を受け入れていくためには、“男性女性”ではなく、ひとりひとりのパーソナリティを尊重して受け入れていく力が欲しいですよね。組織にも、個人にも。
Photo : Yusuke Miyake Illustration : Nao Sakamoto
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神原弥奈子/株式会社News2u(ニューズ・ツー・ユー) 代表取締役会長/ツネイシホールディングス株式会社 代表取締役専務
広島出身。学習院大学大学院修士課程修了。同年、ウェブサイト制作会社設立。黎明期のウェブに携わる。2001年、株式会社ニューズ・ツー・ユーを設立。ネットPR支援サービス「News2uリリース」や国内初のニュースリリースポータル「News2u.net」を提供。2010年には株式会社パンセ設立。2013年にツネイシホールディングス顧問、2014年に同社取締役に就任。2015年より現職。