特集 2017/5/10(水)
早耳調査隊がゆく

告発の行方。華やかなモデルたちが直面するパリコレのブラックな現実

80年代のスーパーモデルの誕生以降、そして現在のSNSを中心としたモデル大ブームが続くなか、業界の暗黙のルールはなかなか変わってこなかった。そんなブラックな労働環境について、ついに大物現役キャスティングディレクターが告発したことで、変化の兆しを見せている……。この一連の騒動の詳細を解説!

※写真のキャスティングシーンと内容は関係ありません

Photo : Getty Images

もしランウェイで活躍するモデルならば、パリで開催されるショーのランウェイ最高のキャリアだと答えるの人は多数派のはず。高名なメゾンのランウェイを歩くことは、一流のスタイリスト、編集者、ファッションフォトグラファーの目に留まる最高の機会でもあるから。そこで“なんとかやってのける”ことはパリのモデル業界では当たり前のこと。そして最善のうえにも最善を尽くすことはこのファッションの中心地において欠かせない心得と考えられている。モデルたちは、他のどの業界でも見られる野心満々で希望に満ちた新人たちと全く同じことだけれど、夢の仕事に就くチャンスを増やすためなら、それ相応の嘘やごまかしとうまく付き合わなければならないということもそう。
 
でもここ最近、ファッション業界の内側から、モデルたちの過酷な違法すれすれの労働環境や人種差別問題などが問題視され始めている。先ごろ、錚々たるブランドたちと長年働いてきたキャスティングディレクター、ジェームス・スカリーが「パリでのオーディションにおける扱われ方でトラウマを受けたと語るモデルたちがいかに多いか」という内容の痛烈な批判文をインスタグラムに投稿した。

  

パリコレで同業者が起こした事件を告発した大物キャスティングディレクター、ジェームズ・スカリーは名だたるトップメゾンのモデル採用を担当している。

Photo : Getty Images

スカリーによれば、あるブランドが雇ったの外注のキャスティングディレクター2名(スカリー呼ぶところの連続暴力犯)は、オーディションを受けたくばその場を去るなと申し付けたうえで、150人以上のモデルたちを自分たちがランチに行くために3時間もの間、真っ暗な階段に放置したというのだ。
 
「この行為はサディスティックで残酷であるだけでなく、私が話した多くのモデルたちが『トラウマになった』と語るほど危険な行為だ」とスカリーは述べている。「このキャスティングディレクターたちがモデルたちを動物のように扱うため、彼らが担当する他のブランドのオーディションまでキャンセルするモデルたちが多数出た」と批判。
 
これに加えて、スカリーは「いくつかのモデルエージェントたちが、そのうち何人かは黒人だが、あるブランドのキャスティングで『有色人種のモデルたちは連れてこないで欲しい』と要求されてきたということを聞いた。ダイバーシティが目下のテーマである現在のファッションシーンにおいて、業界を後退させる恥ずべき行為だ。」とバッサリ。
 
最後に、あるキャスティング担当が密かに15歳のモデルをパリに送り込もうとしていたことを暴露。2世モデルのようにゲストとして招かれてランウェイを歩くのは別として、パリでショーを行うブランドは18歳以下のモデルを被雇用者としてなるべく使わないように指示されているのにもかかわらず……。
 
「とくに18歳以下で、別段心構えもなくパリに送り込まれたモデルたちが、品性のかけらも持たず、モデルたちの生活や気持ちすら考えない人々と相対するなんて、私には想像もできないおぞましい出来事に見える。だがどこの世界にもある“例外”のためなら、人はどんなことだって犠牲にするし、許しさえするだろう?」

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Text : Ryoko Tsukada

  • Photo : Getty Images

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