特集 2014/9/8(月)
世界のおやつ from Seoul/びび언니(オンニ)

チュソク(秋夕)には欠かせない、かわらしいお餅ソンピョン

ソウルは朝夕が涼しく、過ごしやすい季節になりました。韓国では旧暦の8月15日(今年は9月8日)は豊穣を祝い、先祖に感謝するチュソク(秋夕)です。家族や親族が一堂に集まり先祖の供養やお墓参りなどをします。ちょうど日本のお盆のような行事です。毎年、たくさんのおみやげを抱えて故郷に帰る人が多く、民族大移動さながら道路は大渋滞になります。そのチュソクに絶対に欠かせない伝統的な食べ物が「ソンピョン」。うるち米の粉が原料のひと口サイズのかわいらしいお餅です。

ひと口にソンピョンと言っても、家庭によってさまざま。形は半月や貝を形とったものが多く、中に入れる餡は栄養価の高い基本のごまをはじめ、小豆や栗など好みによって違うようです。「ソンピョンを上手に作れると、きれいな女の子を産むことができる」という言い伝えがあり、昔、若い女性は競ってソンピョンを作っていたと言われています。街中の餅屋で年中見かけるソンピョンですが、普段は白と緑の二色くらいしかないのに、チュソクの季節になるとピンクや黄、紫などが加わり、色とりどりのソンピョンが店頭を飾ります。気軽に買える12個入りパック(約3,000ウォン~)のものから、おみやげ用に化粧箱に詰められて売られているものまであり、チュソクにはソンピョンがいかに大事なのかが実感できます。
 
今回は伝統を大事にし、見た目も可愛らしくておいしいとソウルで評判の餅屋「ミジョンダン」で、ソンピョンの作り方を見せていただきました。「ミジョンダン」のソンピョンは口の形をしていて、中の餡はごま味。

「昔、女性たちはチョソクの前夜、月明かりの下で話したり笑いながらソンピョンを作ったそうです。それで微笑んだ口の形をしています」と語るのは、オーナーのキム・ヒョソンさん。キムさんは国内外のお菓子の専門家を訪ねて伝統技法や歴史を学んだり、多方面の料理を勉強して、8年前に「ミジョンダン」を開いたそうです。
 
まずは、うるち米の粉を少量の水でこねた生地を一口大にして、砂糖と塩を混ぜ合わせたごまを包み込み、ラグビーボールのような形にします。

それから、口の形に成形します。次に葉っぱと花びらを作り、花の中央に花芯を付ければデコレーションの完成です。

これを蒸し器で20分間蒸し、最後に表面にごま油を塗れば出来上がり。生地にイチゴを煮詰めたものをまぜたピンク色、黒米をまぜた紫色、かぼちゃを蒸してまぜた黄色、よもぎをまぜた緑色と無色の5色があります。それぞれに素材の特長があり、思わず次々と手が伸びてしまいます。もち米で作る日本の餅のようなモチモチ感がなく、しこしこした歯触りで、お腹にもたれません。少し甘めの香ばしいごまがさらに食欲をそそり、いくらでも食べられます。

ミジョンダン(味正堂)の名前には、おいしいものを正直に作るという想いが込められているそうです。大量生産ではなく、厳選した材料で全て手作りする姿勢が人気の秘密かもしれませんね。また、季節感を大切にしているため、年中販売されている商品はないそうです。ソンピョンもチュソクの時期だけしか販売されてないんです。ほかに、米粉と粉状にした松の実をこねた「松の実のソルギ」や長時間煮詰めたナツメをこねた「ナツメのソルギ」、もち米にマッコリを混ぜて揚げ、高麗人参のシロップをかけた「ケソンジュア」など一つひとつていねいに作られた商品が販売されています。

右から松の実のソルギ、ケソンジュア、ナツメのソルギ。

ホールの餅ケーキは、誕生日などに買っていく人が多いそうです。

併設されているカフェには伝統的な調度品が置かれ、五味茶やショウガ茶など伝統茶も飲めます。

桑の葉茶と一緒に、チョンガと呼ばれる伝統的な調理法で作られた韓菓(右下から時計回りに、紅玉りんご・桑の実・キンカン・いちじく・高麗人参・クルミ)をいただけるソバン・サンチャリムは目でも楽しめる一品です。

自然に囲まれ、美術館やドラマのロケ地もいくつかあり、週末は大勢の人で賑わう人気スポットですが、訪れるなら、人気が少ない平日がおすすめです。ゆったりとした時間を過ごすことができますよ。
 
 
「ソンピョン」 100個入、要予約 120,000ウォン
「松の実のソルギ」 2,000ウォン
「ケソンジュア」 2,000ウォン
「ナツメのソルギ」 16個入 50,000ウォン
「松の実ケーキ」 要予約 40,000ウォン
「ソバン・サンチャリム」 写真は2人前 20,000ウォン

  • ミジョンダン
    ソウル市鍾路区付岩洞274-1
    tel. +82-239-19036
    営業時間/8:00~20:00
    定休日/月曜
    http://www.mijungdang.co.kr

  • びび언니(オンニ)●編集者時代は取材のかたわら、おいしいものを求めてひたすら食べ歩き。20年ほど前から韓国に通い、現在ソウル在住。韓国料理の奥深さを探究すべく、韓国でも食べ歩き修行続行中。愛猫と日向ぼっこしながら、本を読むのがリラックスタイム。

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