飯島望未が語る、いまと20年後のわたし
エル・オンライン20周年を記念して、ファッション、ビューティ、カルチャーなど、様々な分野で活躍する女性たちの素顔に迫るこの連載。第四回は国内外で活躍する若きバレエダンサー、飯島望未さんをフィーチャー。さらなる飛躍を目指して走る続ける彼女が、20年後に掲げる目標とは?
世界で活躍する日本人バレリーナの飯島望未さん。その実力はもちろん、抜群のファッションセンスや飾らないキャラクターでも人気を集めている。1991年生まれ、大阪出身。バレエを始めたのは6歳のとき。
「姿勢矯正のために母に教室に連れていかれたのですが、体験初日から『やってやろう!』と思ってました。というのも、私、極度の負けず嫌いなんです。小さい頃から勉強もピアノもそこそこできたのに、初めてトライしたバレエが難しくてできないのが悔しくて(笑)」
さらに向上心に火をつけたのが、ライバルの存在。
「教室に3人仲良しの子がいて、いまでも親友なんですけど、全員負けず嫌いなので切磋琢磨してました。当時はまだ小学生でしたから、ケンカもいっぱいしましたね(笑)」
ライバルの誰よりも先にプロになりたい。そんな思いに突き動かされると同時に、ステージで踊ることの“魔力”にも染まっていった。
「こう見えて、昔はシャイで内向的だったんですよ。でも、舞台で踊っているときだけは、周りに『別人だね』と驚かれるくらい、自分を出せる。だから、舞台の上にいるときのほうが居心地がいいんです」
天分、そしてたゆまぬ努力で頭角を現し、13歳のとき、NYで行われた「ユース・アメリカ・グランプリ」で3位入賞。15歳で単身渡米し、翌年、ヒューストン・バレエ団とプロ契約を果たす。2014年にはソリストに昇格するという栄誉も。しかし2015年、同バレエ団を退団。
「同じ環境、メンバーで続けていても成長がないなと。すごく恵まれた状況だったのですが、それが当たり前になって、なあなあになっていく自分がイヤでした」
現在は一時帰国中。この8月からは、スイスのチューリッヒ・バレエ団に所属することが決まっている。
「アメリカとヨーロッパでは、バレエのスタイルが少し違うんです。アメリカはクラシックなものが多いけれど、ヨーロッパはコンテンポラリーなバレエも盛ん。私は以前からコンテンポラリーを学びたいなと思っていたので、コンテンポラリーやネオクラシックが強いバレエ団を選びました」
今後、さらなる活躍が期待される飯島さんだが、その頭の中には、もう一歩先の夢が描かれている。
「いつかバレリーナを引退したら、その後は次の世代のバレリーナをサポートしていく側にまわりたいと思っています。留学先を見つけて交渉したり、どうしたらスポンサーがもっとつくようになるかを考えたり、新しいバレエを提案している振付家の作品を日本に持ってきたり。日本のバレエを世界レベルに近づけていく、そのための架け橋になるのが最終的な目標ですね」
Q. ファッションでこだわっていることは?
A.
服のラインがきりっと出るような、構築的なシルエットが好きです。なので、持っている服は、ハリ感のある生地のものばかり。逆に、ダウンジャケットやムートンブーツのような、ふわふわ、モコモコしたものは身につけない主義です。
Q. 最近お気に入りのアイテムは?
A.
昔は全然履かなかったんですけど、最近、スニーカーを履くようになったんですよ。鋲がついていたりなど、ひとクセあるモードなデザインのものをいろんな服に合わせるのが楽しいです。
Q. 美容で気をつけていることは?
A.
まったく気を遣っていなかったんですが、最近は身体を冷やさないように気をつけています。冷えは肌あれのもとになると聞いて、それはアカン!と(笑)。それに、水もよく飲むようになりました。朝起きたらすぐに白湯を飲んだりとか。新陳代謝が上がるといいなと思っているんですけど、効果は……まだわかりません(笑)。
Q. おすすめの体幹トレーニング法を教えて!
A.
いわゆる「ヒップリフト」。仰向けに寝てヒザを立て、お尻を上げ下げする運動です。両ヒザの間にタオルや小さなボールを挟むと、腹筋や内ももの筋トレにも効果的ですよ。あとは、ジャイロトニック。これはバレエダンサーにとってベストなトレーニングで、筋肉を正しく使えるようになります。ケガをしにくくなるし、筋肉のつき方のバランスがよくなって、身体のラインも美しくなるのでおすすめです!
Q. 食生活で気をつけていることは?
A.
気をつけているというよりは自然とそうなってしまったんですけど、朝、昼は食べず、夜にしっかり食べるという、一般的には珍しいスタイルです(笑)。午後や夕方のレッスン前に食べてしまうと、身体が重く感じてしまうので。でも、友人にランチに誘われたときは食べますよ。
Q. 一日のスケジュールを教えて!
A.
平日の午前中は家事や好きなことをします。お昼過ぎから19時くらいまでレッスンをして、そのあとは友人と会うか、自宅で映画を観たり、猫と遊んだりしながら過ごします。週末は大阪の実家に帰ることがほとんど。バレリーナのなかには24時間バレエのことしか考えていない人もいるけれど、私はそういうタイプではないですね。プライベートも大切にしたいし、ダンサーである前に普通の人間でありたいと思っています。
Q. 好きな映画は?
A.
ウェス・アンダーソン監督の作品が好きです。クラシックな映画も大好きで、『カサブランカ』とか。
Q. 挫折したことはある?
A.
自分の実力のなさを痛感して、一回だけ、バレエを辞めようかなと思ったことがあります。ここが自分の限界なのだとしたら、これ以上やる意味ないよね、と。でもそのときに、ヒューストン・バレエ団のディレクターに言われたんです。「なんで私がノゾミをバレエ団に入れたのか、わかるか?」って。「初めて会ったときに、この子は絶対にめげないと感じたし、誰よりもバレエを好きなのが見えたからだよ」と、そう言われて考え直しました。好き嫌いも激しいし、めっちゃ意地悪な人でしたけど(笑)、彼に鍛えられたおかげで私はオープンマインドに変われたし、本当にありがたい出会いだったと思います。
Q. 憧れの女性像は?
A.
桃井かおりさんが大好きです。彼女も昔、バレエをやっていて、イギリスのロイヤルバレエアカデミーに留学していたこともあるんですよね。死ぬまでにぜひ一度、お会いしてみたい方です。
Q. 20年後の自分はどうなっていると思う?
A.
日本のバレエをもっと盛り上げたいし、組織も大きくしたいので、そのために奔走していたいですね。最近は私のファッションに興味を持ってくださった方が、それをきっかけにバレエに関心を持ってくださるということも少しずつ出てきたのですが、そういった気軽なきっかけづくりも必要だなと思っています。「コンテンポラリーなバレエのスタイリッシュな衣装に惹かれて」とか「どこどこのブランドの服が使われるからこの舞台を観てみたい」など、ファッションという入り口からバレエの世界に触れてもらえるような工夫も、積極的にしていきたいです。
Photo : SHUN YOKOI/t.h.i.d.a Interview & text : KAORI SHIMURA Model : NOZOMI IIJIMA
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