エル・エディターのOKINI by AKIKO.N

ロボットに気疲れ!? アートからAIの未来を探る「デジタル・ショック」

エディターが私的に夢中になっているものをリアルな目線でお伝えするデイリー連載OKINI! 本日はウェブプロデューサーAKIKO.Nの体験した人間らしい(!?)AIインスタレーションのお話。

左:人工知能DJ。ふわふわヘッドがチャームポイント。右上:コズモの徳井直生さん。(C)Mao Yamamoto 右下:3Dプリンタを用いた作品で知られるモーリッツ=サイモン・ガイストさんもプレイ。ロボットのミニチュアバンドが楽器を奏でるという、これも最先端AIにフィジカル表現を組み合わせたもの。(C)David Pinzer

「人間の仕事はAIに奪われるのか」「将棋の名人戦でAIに負けた」。昨今、脅威の対象として語られがちなAI=人工知能。先月訪れたアンスティチュ・フランセが主催する日仏メディアアートフェスティバル「デジタル・ショック」は、そんな不気味さを感じる人にもおすすめしたい、演劇やアートの手法でAIの未来を考察した展覧会です。テーマは“欲望する機械”。ロボットと人間の感情的で複雑な関係性を探求したそう。

最初に体験したのは、人間とロボットのDJが相手の曲を受けて交互に曲をかけるDJパフォーマンス。人工知能に独自の着眼点をもち、カンヌライオンズ賞を獲得するなど音楽と映像の領域でも活躍するコズモ(Qosmo)の徳井直生さんによるプロジェクトです。最先端のAIをプログラムされたロボットが、ターンテーブルとミキサーを自ら動かして曲を流すというアナログな行動とハイテクが融合した仕掛け。このリレーが驚くほどスムースで映像を追わないと気が付かないほど。さすが高度なラーニング、違和感のない洗練された曲運び! と思いきや、盛り上がりの持続を嫌うかのように突然曲調を変えることも。度胸もあります。ロボットの上部がビートに合わせてピョコピョコ頭を垂れるような動きは、ヘッドフォンを耳に当てながら頷くDJの動きにそっくり。この人間味あふれる動きを見ていると、このDJを応援したくなってくるから不思議。

左:制作風景。カメラは下を向いて絵を凝視。右上:描き上げられた肖像画は、12,000枚にものぼる作品の一部として加わるそう。左上が私の完成似顔絵です。似ております。ただ、ひとりだけカメラに近づきすぎて魚眼風に……。

次に体験したのはパトリック・トレセさんの『ポールという名のロボット(Etude Humaine #1, RNP-J.a)』。こちらもAIロボットが市販のボールペンを握って似顔絵を描いてくれるという、最新技術を駆使しながらもフィジカルな手法でした。ロボットアームとカメラが設置された学習机に座ること30分。まず丸いカメラがウィ~ンとゆっくり音を立てて、おおまかに顔を捉えます。最初はササッとリラックスした筆致で全体を描いていたものの、描きにくい点(私の場合は口元らしい)を見つけると態度は一変。カシャカシャ音を立てて小刻みにカメラを動かし、ムキになったように高速でガリガリとペンを動かしていきます。なんだかイライラしている雰囲気で申し訳ない気持ちに。最後のロングヘアに至っては「あー終わらん」という感じで適当にぐるぐる描いてました。集中力の切れっぷりも人間らしく、気分屋のクラスメイトとコンビを組んだ美術の授業のよう。なお、2017年3月20日(月・祝)には「ロボットとの密室空間で、人間は平穏でいられるのか?」という問いを検証するイベントが予定されているそう。似顔絵とは違った緊張関係が味わえそうで、こちらも楽しみにしています。

今回体験した絵や音楽作品そのものも、AIからの無機質な出力ではなくロボットの身体性を通したことで、より愛着が沸くものになりました。AIは効率化の文脈でも語られますが、AIの表現こそ回り道をするプロセスが大切なのかもしれません。

  • 第6回「デジタル・ショック」―欲望する機械

    会期:2017年2月10日(金)~3月20日(月・祝)
    ※アンスティチュ・フランセ東京での展示は3月19日(日)まで
    会場:アンスティチュ・フランセ東京、東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)、渋谷WWW、gallery COEXIST-TOKYO、EARTH+GALLERY、座・高円寺ほか
    主催:アンスティチュ・フランセ日本
    http://www.institutfrancais.jp/tokyo/

  • Illustration: DAICHI MIURA

    AKIKO.N:ウェブプロデューサー。忘れられないロボット体験といえば、平田オリザ先生のロボット演劇「働く私」。(働くために作られた)ロボットなのに働けなくなってしまった主人公を励ますロボットと人間の会話劇です。円滑なコミュニケーションのとり方がわからなかったロボットが徐々に他者への想像力を身につけ、やがて……。この展覧会にハマった方はぜひ一度鑑賞を。

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