夏の終わりを告げるデザートは、素朴で手づくり感いっぱいの「サマー・プディング」
材料はベリー類、食パン、砂糖だけという至ってシンプルなこのデザートはイギリスのおふくろの味。本当に簡単につくれるので、レシピもご紹介。
例年にない程暑く、冷たいデザートを食べる機会も多かったイギリスの夏も徐々に終わりに近づいて来た今日この頃。そんなデザートたちの最後を締めくくるのにふさわしいのが、ベリー類をパンに閉じ込めた「サマー・プディング」。
サマー・プディングを深いワインレッド色にするのに欠かせないのが、8月中旬から9月にかけてが旬のブラックベリー。94歳になる義理のおばあちゃんの話によると、夏が終わりに近づくと家族で野生のブラックベリーを森へ摘みに行ってはサマープディングをつくり、皆で夏の終わりを惜しみながら食べるのが常だったそう。至って安価なデザートなので昔は家庭内で食べるものとされていたらしいけれど、最近は夏の期間のみパブなどで食べる事も可能。値段は5~6ポンドくらいです。
聞けばサマープディングはその非常に簡単なレシピゆえ、イギリス人が 一番最初につくり方を学ぶデザートでもあるらしい。それもそのはず、食パンを四角や三角に切って隙間ができないように工夫しながら型に敷き詰めてふたをする行程は工作のようで大人でも結構楽しい!
ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーなどのベリー類に砂糖を加えて熱すること2~3分。 そのベリー類のフィリングが冷めたら食パンを敷き詰めた型に流し込んで、最後に丸く切り抜いた食パンできっちりふたを。
その上に重しを乗せて、冷蔵庫で寝かせること6~8時間。
めでたく固まったプディングを、上手にお皿の上にひっくり返してできあがり。
コツはベリー類を煮すぎないこと、焼きたてではなく2~3日経って固くなった食パンを使うこと。そして食す際にはこれまたお約束のダブルクリームを上からたっぷりかけていただきます。(というか、クリームを上からかけないで食べるイギリスのデザートなんてあるの? )お味の方はというと、ベリー類のジュースをたっぷり含んだパンがじゅわっとジューシーで、フィリングは甘すぎず酸っぱすぎず非常にさっぱりした飾り気のない食べ心地。
いつも見た目重視でバタークリームたっぷりのカップケーキばかりつくっている私、この質素なサマープディングの味と成り立ちに心を洗われたような気持ちになったのでした。
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五月ギャンブル●Satski Gamble。ニューヨークのマグノリア・ベーカリーでケーキ・デコレーターとして修業する傍ら、ロック・バンドのメンバーとしても活動。ロンドンのレコード会社と契約後、渡英。著書に『ニューヨーク仕込みのカップケーキとデコレーション』。
http://satskigamble.com/