イギリスの夏を彩る、いちごとメレンゲのイートン・メス
普段はどっしり系のデザートが好まれるイギリスでも、夏には季節のフルーツをたっぷり使ったものが主役に。その中でもひときわ夏らしい一品をご紹介。
日本ではジメジメしたイメージの6月ですが、イギリスでは濃い緑が目にしみる初夏が始まる月。いちごやラズベリー、ブラックベリー等も生り始め、ロンドン郊外の果樹園などではいちご狩りが解禁になります。そんな旬のベリー類が一番おいしく食べられるデザートだと自信を持って言えるのがこのイートン・メス。
イギリス以外では「パブロヴァ」と呼ばれているこのデザート、こちらでは19世紀からイートン・メスの名で通っています。「イートン」はご存知イギリス屈指の名門パブリック・スクールであるイートン校、そして「メス」はぐちゃぐちゃ、の意味。何でも、イートン校で毎年開催されているクリケットの試合の際にサーブされるパブロヴァを、イートン校の生徒達がぐちゃくちゃにしながら食べた光景からそう命名されたそう。
焼き上げられたメレンゲの上にたっぷり乗ったホイップクリーム、その上にてんこ盛りにされたいちご、ラズベリー、ブラックベリー等のベリー類をスプーンでざっくざくと崩しながら食すこのデザート、初めて口にした時あまりの美味しさに唸った記憶が。
サクサクのメレンゲとベリー類&ホイップクリームとのコンビネーションが絶妙で、甘過ぎない上品なお味なのです。私ごとですが、その美味しさに魅せられて自分のウェディング・ケーキも実はこのイートン・メスを使用しました。
ベリー類が旬の5月から夏が終わるまで、イギリス中のパブやレストランのデザート・メニューに登場するこのイートン・メス。お値段は5ポンド~7ポンドくらい。メレンゲのみなら街のケーキ屋さんやスーパーマッケットでも購入可能なので、おうちでつくって食べる事もしばしば。ここだけの話ですが食べる直前に上からダブル・クリームをたっぶりかけて、もの凄いメス(とカロリー)にして食すのが私流の食べ方。イギリスの短い夏の間にしか食べれないんだから無礼講・・・といい聞かせながら、今日も二皿平らげたのでした。
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五月ギャンブル●Satski Gamble。ニューヨークのマグノリア・ベーカリーでケーキ・デコレーターとして修業する傍ら、ロック・バンドのメンバーとしても活動。ロンドンのレコード会社と契約後、渡英。著書に『ニューヨーク仕込みのカップケーキとデコレーション』。
http://satskigamble.com/