特集 2014/5/23(金)

注目のパティシエ、ジャニス・ウォンに迫る!

2年連続で「アジアのベスト・ペストリー・シェフ」に選ばれ、アジアのみならず世界中が注目するパティシエ、ジャニス・ウォン。食とアートの領域をおいしく美しくつなぐ彼女のクリエーションの秘密って?

まずは「Cassis Plum」(梅カシス)。カシス、エルダーフラワー、ヨーグルト味のフォーム(泡)、梅酒、タケノコで構成された一品。「この球形のものはカシスのピュレで作ったもので、独特の食感に仕上げてあります。カシス爆弾、と呼んでいますが、ムースのような、アイスのような、何とも称しがたい新しい感じが分かっていただけると思います。ちなみにこのデザートでは、照り焼き風のタケノコに少し砂糖を使っ以外は、砂糖をほとんど使っていません」。梅酒を使った甘酸っぱいデザートには「梅カクテル」がぴったりなのだとか。
 

ジャニスは日本の食材にも詳しく、たとえば野菜の産地や調味料のメーカーまで指定して使うことがあるのだそうだ。「熊本や高知などでその地方の素材を使ったレシピも作りました。小さい頃に日本に住んでいたことがあるので、とても親しみがある国えすし、面白い素材がたくさんあります」。もちろん、シンガポール人として地元の素材も大切にする。

「Shades of Green」(グリーンシェード)。ピスタチオのスポンジにココナッツムース、パンダンとパームシュガーのカスタードを合わせたプレートだ。「パンダン」は、シンガポールでは「カヤ」と呼ばれる植物。有名な「カヤトースト」のペーストに使われている、と言えば想像できるだろうか。いかにもシンガポールらしい素材だ。ジャニスはこのパンダンが好きでよく使っているのだとか。「カヤは甘いので、合わせる甘みには普通の砂糖ではなく、沖縄の砂糖やパームシュガーを使います」。甘いのにもったりとしない食後感が爽快だ。グリーンのイメージで仕上げたこちらのデザートには、アルゼンチンの白ワイン「クリオス・トロンテス」をおすすめしている。

「Chocolate H20」は、カカオ72%のチョコレート、塩キャラメル、エビアン、そして柚子シャーベットを組み合わせて、スペインの赤ワインに合わせるデザートを組み立てた。チョコレートのダークな味わいとキャラメルの濃厚さに、柚子が見事に調和する。「柚子はもちろん日本から。高知のものです。以前に高知の柚子を使ったレシピブックを作りました。素晴らしい香りと清涼感で、私の大好きな食材です」

これは「Red Miso Caramel」(赤みそキャラメル)。リースリングにぴったりだというこのプレートには、赤みそと柚子、マスタードのクランブル、マスタードと柚子のメレンゲが使われた。みその塩味、マスタードの香りに柚子。そして何よりも食感の組み合わせが面白い。どうしたらこんな組み合わせが生まれるのか……。
「新しい作品を作るときは、まずメインに据える食材を決めます。それをよく吟味して、香りや味を探りながら少しずつ組み立てるのですが、私は香りや味と同時にテクスチャーをとても大切にしています」。確かに、彼女が作るプレートの中ではさまざまな食感が計算され、構築されている。
食材への探求心と、それを組み立てるセンス。ジャニスのクリエイティブ魂は、まだまだ進化を続けそうだ。
 
さて、アクティブなジャニスには、デザートバーのオーナーシェフのほかに、もうひとつ、アーティストとしての顔がある。「エディブル・アート」(食べられるアート)として、いろいろな場所でイベントや展示会を開催しているのだ。食材を使って絵を描いたり、小さなオブジェ を並べてインスタレーションを展開したりと、現代アートさながらの作品を作り上げるのだが、そこにあるものはすべて「食べられる」というのが特徴。そしてもちろん、それらは間違いなくおいしい。
「アート活動とデザートバー、どちらもとても刺激的でクリエイティブ。お店ではお客さまは席に座ってデザートを食べるわけで、そこでは私たちは“個対個”と してのサービスを提供します。それに対して、何十人、何百人という人に見てもらう“アート”作品は、まず見た目で何かを感じてもらい、そのあとは観客に“自分で 取って食べる”というアクションを促す。いずれも最終的には口に入れて味わうことになりますが、アプローチは全然違います。作るほうの考え方もお客様のリアクションも、まったく違うのです。面白いでしょう?」
パティシエであり、アーティストであり、そして経営者でもあるジャニス・ウォン。彼女がこれからどんなクリエイションを見せてくれるのか、楽しみでたまらない。
「今後は日本とのつながりがもっと密になると思います。いろいろなプロジェクトを企画しているので、近々みなさんとお会いできるかもしれませんね!」

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photos : Tomoko Osada  cooperation : Singapore Tourism Board

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