エディターズPICK 2017/9/4(月)
FROM ELLE WORLD

絶望と生の狭間でもがく女性たち。「ウィメン・バイラインズ」が描く一筋の希望とは?

紛争や宗教問題、性暴力や貧困による底辺の生活――世界にはいまだ多くの苦境に立たされている女性がいる。愛に見捨てられた世界に生きる絶望と、自分の生を全うするために日々もがき苦しむ女性たちにいま、私たちは何ができるのだろう? 「グッチ」とビヨンセ、サルマ・ハエックらが主宰するグローバル・キャンペーン、“チャイム・フォー・チェンジ”の一環として始まった「ウィメン・バイラインズ」の活動に、UK版エルのエディターが参加し、その取り組みについてレポート。

マリアンヌ・パール

パリで開催された「ウィメン・バイラインズ」 

UK版「エル」は、フランス、パリで今年7月に1週間に渡って開催された「ウィメン・バイラインズ」のワークショップに参加。12人のフランス人女性ライターが左岸にある「ケリング」のオフィスに集まり、文章や写真、映画といったメディアを通じ、難民や性暴力からの生還者、その他の人々の物語を伝えることに集中して取り組んだ。マリアンヌ・パールは女性たちを指名して、それぞれがシェアできる個人的な話を持ってくるように指導。なかにはまだライティングのキャリアをスタートさせたばかりの人もいたにも関わらず、1週間後、女性たちは自分の最も親密な話について語り合うようになっていたのは驚きだった。 
 

マリアンヌ・パールが「ウィメン・バイラインズ」に参加した理由 

マリアンヌ・パール自身の物語については多くの人が知るところであり、それは彼女がなぜ「ウィメン・バイラインズ」に従事するようになったか、という理由でもある。2002年、当時パールの夫でアメリカ人ジャーナリストだったダニエル・パールは、タリバンに捉えられ、殺害される。マリアンヌがダニエルの子どもである息子を出産したのは、彼の死の直後だった。その数カ月前には、NYテロ「9・11」が起きたばかりだった。3000人が死亡し、何千人もの子どもが親を失い、世界中のコミュニティが破壊的なダメージを受けた陰惨な事件。犠牲者が増えるのを目にするうちにパールの心のなかにひとつの疑問が湧いてきた。―ー「希望はあるのか?」

その答えが「イエス」であることを信じて、探求を始めた彼女は、女性たちの物語のなかにその希望が育まれることを見出した。

ワークショップの参加者にアドバイスするマリアンヌ・パール(右)

ストーリーテリングについての実践的なワークショップ

ワークショップでは、まずは最も困難な相手へのインタビューから始めるべきであるという説明からスタート。ドキュメンタリー映画監督のステファニー・ラモアが、危険なギャングの縄張りで信頼を得るために行った方法について講義した。ラモアは映画『L.A: Gangs de femmes』の撮影のために、LAで女性のギャング集団と1年間生活を共にした経験をもつ。彼女は女性たちのなかに多くの自分の姿を見い出した、と語り、「愛に見捨てられた世界に生きる絶望と、自分の生を全うするために日々もがき苦しむ」ことについて言及した。

もうひとつのワークショップでは、難民や虐待の生存者の描写の多くに見られる、被害者でありヒーローだ、という昔ながらの語り口は避けられるべきだということを参加者にレクチャー。パールは、女性が彼女たちの物語を語るうえで世界共通の真実があると信じている。ライターやレポーターとしての彼女のキャリアを通じてパールは、“女性の苦しみが何であれ、彼女たちには圧倒的に深い同情がある”ことを知った。

「私はあらゆる厳しい状況にある女性たちを見てきました」と語ったパール。「彼女たちはどのような辛い状況でも、常にほかの人々を助けようとするのです」

ワークショップの参加者たち

パリの参加者たちに対して、“それぞれ異なるバックグラウンドをもっていても、全員がほかの女性たちを助けることで互いに結ばれているのだ”という思いを伝えたパール。

女性がエンパワーメントやフェミニズムについて語ることには大きな意義がある。そしてそれを多くの人に訴えるためには、テクニックと正しい理解や心がけが必要。自らの、そしてほかの女性たちの物語を世界に向けて語ることに、意義を見出した彼女たちによって、新たな物語が紡がれていくだろう。

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translation: NAOKO OGATA

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