最強のアート施設 江之浦測候所

エル・エディターが私的に夢中になっているものなどをリアルな目線でお伝えする、デイリー連載OKINI。 本日は興味なくとも行く価値アリ!なアート施設をほんの一部ですがご紹介します。

東京から鈍行列車で熱海方面へ。車窓に海とみかん畑が広がり高台の無人駅に着いたらそこが根府川駅です。ずいぶん田舎に来たなあと思いつつ、駅発の無料送迎バスで5分ほど行くと江之浦測候所が見えてきます。写真家で小田原文化財団のファウンダーでもある杉本博司氏が10年以上構想し、小田原の約1万平米の土地に昨年10月開業したこの文化施設。測候所といっても気象観測専門では無く、自然と共存したギャラリーのような庭園のような多様に切り取れるアート空間です。

「なぜ根府川!すっごい不便!」と行く前は不満がこぼれそうになりそうでしたが、わざわざこの地を選んだのは、小田原から世界へアートを発信したいという杉本氏の強い思い入れがあったから。相模湾の海とみかん畑こそが杉本氏の原風景で、日本美術や建築への深い造詣を存分に発揮するのに適した場所でもありました。測候所から見える景色に遮る余計な物は無く、緻密なコンセプトの写真がアート界で高い評価を受けている杉本氏らしい感覚。天気が良ければいつまでもボーッとしていたくなる静かな空気で満たされています。

冬至の日の出を見るためのトンネル。手前は室町時代のものと推定される井戸。

施設全体をゆったり散策するのが一番の楽しみ方。「千利休が現代に生きていたら」と想像し造られた茶室、夏至や冬至の太陽を直線的に見られるよう設けられたトンネルなど見どころはたくさん。開館記念に杉本氏の代表作「海景」シリーズも展示中で、この場所で見るのにぴったりです。

特に人気なのは硝子舞台。空と海を背景に張り出した硝子舞台をのぞむランドスケープは圧巻。足場は釘を一本も使わない伝統的な檜の懸(かけ)造り(清水寺の舞台と同じ技法)です。

江之浦測候所の耐用年数は1万年を想定し、現代文明が滅びた後も古代遺跡として残るよう考えられているとか。そんな施設、ここ以外に聞いたことはありません。

熱海・湯河原の観光リストに加えたら最強!なアートスポットです。

所在地:神奈川県小田原市江之浦362番地1
休館日:水曜
入館方法:完全予約・定員入替制
入館料:一律3,000円(税別)
※中学生未満来館不可

見学は日時指定の完全予約制で、小田原文化財団公式ウェブサイトから申し込めます。

  • Illustration:DAICHI MIURA

    KIE:アシスタント フォト エディター。映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が今年一、難解でした(起きたらエンディングだったハネケ監督の『ハッピー・エンド』を除く)。「社会風刺が映画の目的」と言って憚らないリューベン・オストルンド監督作品。あなたの良心を試されたら、故意に不快感を与えられたら、どう反応する...?深層心理を炙り出される感じは『ごっつええ感じ』のシュール系コントと紙一重だと感じつつ、他人事とはねのけられない境遇にヒヤヒヤした151分。 もはやサイコホラー??

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