【vol.1】大統領の消された妹:アメリカのファッション史を築いたケネディ家の女たちの光と影
ジャクリーン・ケネディ・オナシス、その妹のリー・ラジウィル、ジョン・F・ケネディJrに嫁いだキャロリン・ベセット・ケネディ。ファッション・アイコンとして今もなお絶大な人気を誇り、現在も影響を与えているケネディ家の女性たち。でもその陰で人知れず存在を葬られた長女がいた……。華麗なる一族に隠された悲劇の長女、ローズ・マリーの人生が最新の資料に基づき1冊の本「ROSEMARY The Hidden Kennedy Daughter」として出版されたばかりの今、ケネディ家の女性たちのパワーを振りかえれば、その分だけ強かった影の部分も見えてくるはず。初回は大統領の妻、ジャクリーンの物語。
ピルボックス・ハット、Aラインのコートやスーツをまとった“ジャクリーン・マネキン”が街にあふれ、同様のルックは爆発的ヒットに。そのおかげでついに1960年、夫ジョン・F・ケネディは大統領選を勝ち抜き、アメリカ合衆国大統領の座を手に入れる。同時に待望の長男ジョン・F・ケネディ・Jr(通称ジョンジョン)が生まれる。ジャクリーンは任期1年目のパリ、ウィーン公式訪問でシャルル・ド・ゴール大統領をその教養とフランス語で圧倒し、その後はときの文化相であったアンドレ・マルローをも魅了し、ワシントンのナショナル・ギャラリーにモナリザを招聘。
ファーストレディとなったジャクリーンは大統領の妻というよりも、一種の敏腕政治家のようにアメリカの上質化に手腕を発揮する。まず取り掛かったのはホワイトハウスの“ヴェルサイユ化”。衣装面その他はオレグ・カッシーニが受け持ち、歴代の大統領遺愛の品のなかから良いものだけを厳選し、骨董商でアメリカの優れた芸術品を買い求めた。支払いはもちろん義父ジョセフ・ケネディ。彼女の肝いりでホワイトハウスに初めての本格的なフランス料理シェフが雇われ、公式晩餐会のメニューもフランス語表記に。改装が終わったホワイトハウスをファーストレディ本人が案内するというテレビ番組がNBCによって放送され、長女キャロラインと長男ジョンジョンの為にホワイトハウスには幼稚園がつくられ、若き大統領と美しいファーストレディ、可愛らしい子供たちの姿は数々のメディアを通じて人々の目に焼き付けられた。
一家は幸福の絶頂とアメリカの未来を象徴するように見えた。だがしかし……。
Photo:GETTY IMAGES Text:Ryoko Tsukada
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(参考文献)
ローレンス・リーマー「ケネディ家の女たち」
Edward Klien 「Just Jackie : Her Private Years」
ネリー・ブライ「ケネディ家の悪夢 セックスとスキャンダルにまみれた3世代の男たち」
クリント・ヒル「ミセス・ケネディ 私だけが知る大統領夫人の素顔」