「モテ」「男ウケ」ダメ、絶対! モテのくだらなさを教えてくれるドラマ「プリーズ・ライク・ミー」

自信がない人ほどモテたい、男受けしたいと思うもの。「そんなこと考えても幸せは手に入らないよ」と教えてくれる、最近ハマったドラマがもう……。

左の生え際が気になる男子がジョシュ役のジョシュ・トーマス。右が私生活でも親友の親友トム役のトーマス・ワード。ややこしいなっ!

Photo : Getty Images

主演のジョシュはわずか17歳でスタンダップコメディアンとして注目され、24歳のときにスタートした本作の脚本と製作を兼ねているあたりも、「GIRLS」のレナ・ダナムと共通しています。
いわゆる天才というやつです。
でも劇的にブサ……見た目に恵まれておらず、口が達者だからときどき我慢できないほどにムカツク!
なのに、ずっと見ているとかわいく見えてきて、途方もなく愛しくなってきて、彼のふとした空虚な表情に涙が止まらなくなったりするのです。

初めての彼氏ジョフリーにはこんな感じで告白されます。出てくる彼氏がすべてカワイイ&いいカラダ。イチャイチャシーンも超キュート。腐女子悶絶必至です。

かつて編集部の美女アシスタントが「GIRLS/ガールズ」に興奮しすぎるあまり「レナって本当にかわいいんですよ!」と訴えてきたのを、「美人がブスキャラを『かわいい』って言ったら一種の侮辱になるからやめなさい」とたしなめたのを今、後悔しています。
 
ブサ……見た目に恵まれていないし、ムカツクし、でも果てしなくかわいい! そう思う心は正しかったのです。
なぜそんな感情にたどり着くのか。
掘り下げてみると残ったのは、「孤独」でした。
本当に「孤独」な人は、真剣に愛される。本当に人に愛されるには、孤独は欠かせないのです。独断と偏見でそう宣言します。
 
よりいっそうそれを理解させてくれるのは、親友トムの存在。
すごく背が高くてノボーっとしていて身体もダルダルで肉食感0(ゼロ)。500ml缶糖質ゼロビール並みに、味気がない(独断です)クセに見た目だけはデカいのです。なのに、いや、だからこそ恋人のすべてを受け止めてしまうタイプ=優柔不断で、心にぽっかり穴が開いている阿佐ヶ谷とか吉祥寺とかに住んでいそうな(偏見です!)女子がひっきりなしに寄ってきます。
いつも誰かと一緒にいないと気が済まず、流されて同時に3人と付き合っちゃったりする、“いい人”の皮をかぶったゲス野郎。
 
そんなトムが傍にいるからこそ際立つのですが、ジョシュはそれとは対照的な存在で、たとえブサイクでモテなくても、絶対に他人に愛されようとしないのです。
「悪態つくのを止めればモテるのに」「身体鍛えればいいのに」。
そう言われてもやっぱりやめないし鍛えないのです。
「孤独」と「モテ」を天秤にかけたとき、常に前者をとるのです。その潔さったら……。そんな姿が健気なのです。かわいいのです。次々にイケメンに愛されるのも納得なのです!

パパはママと別れて今は若いタイ人と暮らしています。白人ダディの典型でイヤだな、と思っていたらこの新しいパートナーが本当に賢い人として描かれていて、マイノリティ人種として安心できます。

彼が過ごしてきた子ども時代は、そんじょそこらの普通の人が経てきた生活とはレベルが違います。
本気でメンタルを病んだ母親と、彼女を愛しているけれど疲れ切って別れざるを得なかった父親、そして取り残された一人息子。
さらに見た目でいじめられてきて社会になじめずにいた少年時代……。
老成してしまうほどに厳しい少年時代を過ごしてきたジョシュの姿には、おこがましくて同情なんかできないほどです。
徹底して周囲に疲弊させられ孤独になった人。なので、ぽっかり空いた自分の穴を埋めようと寄ってくる、「メンタル病んでないけど心が削られちゃっている中途半端な人たち」を絶対に受け付けない。また、病んでる人にとてつもなく優しいけれど、絶対に甘やかしもしません。

モテゲイにかっこわる~いフラれ方をするシーン。大江千里です。つらたんです。

そう、ジョシュの魅力はまさに誰よりも先に身に付けてしまった「孤独を甘受する大人力」にあるのです。
周囲から「子どもっぽい」と言われることもあるけれど、それはとんでもなく老成してしまったゆえの「子ども返り」。
そんな彼の視点に立ってみると、彼の周りに出没する「モテ」を意識した登場人物がとても幼稚に、愚かに見えてきます。そして、そういう人は心なく、他人の心を削っているのだとわかるのです。
とりあえず今、日本でチェックできるシーズン4まですべて観れば、最後には「モテも男(女)ウケもダメ、絶対!」と叫ぶことでしょう。

   
メンタルの細かいところがすごく良く描けているので、どうリサーチしたらこんな風に繊細な脚本が書けるのだろうと不思議に思ってグーグル先生に教えてもらったところ、どうやらこのストーリー、かなりジョシュを演じているジョシュ・トーマス本人の人生に近いところがあるそう。
どうりで。
17歳で並み居る大人を押しのけ、コメディ大会で優勝したのも納得です。

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  • KEIICHI : デジタルフィーチャー&ニュースエディター。最近、猫を飼ってしまいたい欲がむくむくと沸いてきて悪魔の誘惑と闘うのに必死。石をパンに変えられても変えちゃいけないの! と言い聞かせ、代替物になりそうな猫キャラ、猫画像、猫グッズなどなどあらゆるものを周囲から排除することに……したのですが、仕事で猫と絡む機会が出てきて誘惑に負けそうです。試練だと思って乗り越えます。

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