【最終回】大統領の消された妹:アメリカのファッション史を築いたケネディ家の女たちの光と影
ジャクリーン・ケネディ・オナシス、その妹のリー・ラジウィル、ジョン・F・ケネディJrに嫁いだキャロリン・ベセット・ケネディ。ファッション・アイコンとして今もなお絶大な人気を誇り、現在も影響を与えているケネディ家の女性たち。でもその陰で人知れず存在を葬られた長女がいた……。華麗なる一族に隠された悲劇の長女、ローズ・マリーの人生が最新の資料に基づき1冊の本「ROSEMARY The Hidden Kennedy Daughter」として出版されたばかりの今、ケネディ家の女性たちのパワーを振りかえれば、その分だけ強かった影の部分も見えてくる……。最終回は大統領の妹、ローズマリーの“隠された”人生の物語。
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批判に晒されたケネディ帝国の両親
全てが明るみに出るのは時間の問題だった。ユーニスは「サタデイ・イヴニング・ポスト」に公開書記を掲載して、ローズの障がいについて明らかにした。しかし、ロボトミー手術を受けたことは伏せていた。1974年、ロボトミー手術を受けてから約30年後、母ローズが初めてローズマリーをハイアニスポートに招いた。母ローズが高齢になるにつれ、ローズマリーが年に1回、母のもとを訪れる方が楽になった。姪や甥たちがローズマリーと心を通わせ、水泳に連れ出したりあれこれと世話を焼いた。母ローズにとっては娘と会うのは苦痛だった。ローズマリーは他の家族と同様に信託財産を持っていたので、セント・コレッタでは十分な待遇を受けていた。姉ローズマリーに影響されてスペシャル・オリンピックを始めた妹ユーニスはこの姉をことのほか気にかけた。
1995年、母ローズが104歳で死亡した10年後の2005年、ローズマリーはジーン、ユーニス、パトリシア、それに末弟テッド(エドワード)に看取られながら亡くなった。86歳、ケネディ家で事故でもなく、病気でもなく、ましてや暗殺でもなく、自然死した最初のひとりだった。そして今年、新資料やインタビューに基づき、ローズマリーを主人公にしたノンフィクション「ROSEMARY The Hidden Kennedy Daughter」がアメリカで出版された。華麗なる“アメリカの王室”、ケネディ一族の陰に隠され続けてきた長女に、ケネディ暗殺事件から52年を経てようやくはっきりとスポットライトが当たった日、華やかなものには必ずその分影が付きまとうことを世界中が改めて思い出すことになった。
Photo:GETTY IMAGES Text:Ryoko Tsukada
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(参考文献)
ローレンス・リーマー「ケネディ家の女たち」
Edward Klien 「Just Jackie : Her Private Years」
ネリー・ブライ「ケネディ家の悪夢 セックスとスキャンダルにまみれた3世代の男たち」
クリント・ヒル「ミセス・ケネディ 私だけが知る大統領夫人の素顔」