なぜテイラーはノミネートされない? 白人がいなくなったグラミー賞2018を徹底分析
2018/01/27(土)
> <

8/8

テイラー・スウィフト(Taylor Swift)とテイラー軍団から脱退したとも言われているロード(Lorde)

テイラー陣営に何かしらの思惑はあったのか

ざっと全体を駆け足で見てきましたが、昨年のアデル3冠と同様、ブルーノ・マーズの主要3部門独占という結果もあるかもしれない。実際、例年にない、全く予想のつかないのが今年のグラミー。だからこそ、もしかすると、2018年グラミーの審査期間を外してアルバムをリリースしたのは、テイラー陣営にそうした思惑もあったかもしれません。

2017年11月10日にリリースしたテイラー・スウィフトの最新アルバム『レピュテーション』のリードシングル「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥー」

最近のテイラーはとにかく容赦ない。それは皆さんもご存知だと思います。カニエ・ウェストとの確執をモチーフにした「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」のリリックの内容にしろ、やるときは容赦なくやる。テイラーの公式ライバルであるケイティ・ペリーのアルバム発売日にそれまで封印していたスポティファイでの楽曲ストリーミングを解禁することで、その出鼻を挫いたりと本当に容赦ない。つまり、勝てる喧嘩しかしない、勝てる土俵にしか上がらないのが、『レピュテーション』以降の新しいテイラーです。

2018年1月12日に世界発売となったカミラ・カベロのアルバム『カミラ』から「ハバナ feat. ヤング・サグ」

そういう判断から、一昨年のブルーノ・マーズ同様、敢えて審査期間を外すことで翌年のグラミーを狙ってきた。そうした穿った見方をすることも可能かと思います。今のところ、彼女の対抗馬はフィフス・ハーモニー脱退後のソロが全米第一位に輝いたカミラ・カベロと、間もなく新作を上梓するジャスティン・ティンバ―レイクあたり。そんなに強敵ではない。ケイティ・ペリーは既に叩きのめされていますし。今年のブラック勢に比するドレイクやフランク・オーシャンはグラミーに興味を失っていたりもする。なので、テイラーファンのお楽しみはむしろ来年に残されているというわけです。

昨年、不倫を正式に認め、公私共に話題となったジェイ・Zの「ザ・ストーリー・オブ・O.J.」 

というわけで、「もしテイラーがノミネートされていた場合、賞の行方はどうなったのか?」という視点から2018年のグラミーを見てきました。ただ、今年のグラミーの結果は、おそらくこれまで通り、来年のグラミーのノミネート/受賞にもかかわってくる。なので、テイラー不在のグラミーを高みの見物をしつつ、この世紀の激戦を楽しんで下さい。ノミネートされたどの曲、どのアルバムも必聴の作品です。ぜひそちらもチェックのことを。

Text: Soichiro Tanaka Photo: Getty Images, Aflo

  • 田中宗一郎/音楽サイト「ザ・サイン・マガジン」のクリエイティブディレクター、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『ロッキング・オン』副編集長を務めたのち、1997年に自ら音楽雑誌『スヌーザー』を創刊。その後、2013年秋にWEBメディア「ザ・サイン・マガジン」を開設。『スヌーザー』がオーガナイズするクラブイベント、クラブ・スヌーザーは全国各地にて現在も開催中。@soichiro_tanaka

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト