今年のグラミーは時代の変化の反映、現実世界における多様性の表象
では、なぜこんなノミネート結果になったのか? これも答えは簡単です。時代の変化をそのまま反映したから。ひとつには、ここ数年の内に人口全体に白人が占める割合が50パーセントを割ってしまうだろうと言われているアメリカ合衆国の現状です。あるいは、アカデミー同様、これまで「白すぎる」という批判も受けてきたグラミーが2010年代的なイシューのひとつである多様性を反映させた結果と言えるかもしれません。
例えば、2016年のグラミー授賞式を思い出して下さい。テイラー・スウィフトが年間最優秀アルバムを受賞した際、9部門11ノミネートと最多ノミネートだったケンドリック・ラマーが結果的に主要3部門すべてを逃したことになり、世界中からバックラッシュが巻き起こった。また、「ビヨンセとアデルの一騎討ち」の様相を呈していた昨年のグラミーでは、アデルが主要3部門を独占。こちらも物議を醸し出しました。おそらく今年のノミネートはこうした結果を受けての判断でもある。
あるいは、昨年2017年は、レディー・ガガを筆頭に2010年代のポップ・シーンを牽引してきた女性アーティストたちの人気やプロップスが頭打ちになりつつあると囁かれた年でもある。そうした状況を反映された結果とも言えるかもしれません。では、実際に、もし審査期間だったとして、グラミー賞2018でテイラーはノミネートされていたのか?
Text: Soichiro Tanaka Photo: Getty Images, Aflo
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田中宗一郎/音楽サイト「ザ・サイン・マガジン」のクリエイティブディレクター、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『ロッキング・オン』副編集長を務めたのち、1997年に自ら音楽雑誌『スヌーザー』を創刊。その後、2013年秋にWEBメディア「ザ・サイン・マガジン」を開設。『スヌーザー』がオーガナイズするクラブイベント、クラブ・スヌーザーは全国各地にて現在も開催中。@soichiro_tanaka