future of lifestyle
脱標準化で見えてくる近未来の働き方とは?
2020年へ向けて大きな変革期を迎えた今、私たち働く女性はどう意識を変えていくべきなのだろう?メディアアーティストとして近未来の姿を描く、落合陽一さんに話をうかがった。
ELLE(以下、E) 働く女性にとって、近い未来にはどんな変化があるでしょうか?
落合陽一(以下、O) 大きくいうと、お金の得方と働き方が変わっていくと思います。これからの世界では標準化から多様化、マスから個人化、といったようにパラダイムシフトが起こるので、〝標準的な働き方〞という考え方が変わっていきます。
E 標準的でない、多様化した働き方とはどんなイメージですか?
O 例えば、〝タイムバンク〞や〝バリュー〞といった、専門家が自分の時間を販売できるサービスがすでに始まっています。これはSNSと連携してネット上の影響力を計測することで価格が決まるもので、僕も参加しています。こういうものが今後一般にも広がっていけば、世の中のあらゆるものがブロックチェーン(インターネット上の信用創造プログラム)に乗って経済指標に変換されるようになる。今はアプリを介して個人同士がモノを売買していますが、それと同じ感覚で時間や能力を売れるようになっていきます。何を売買するかは個人の特性とニーズに委ねられる。オートクチュール感の増した世界観というか。そういう世界ではフォーマット化した会社の給料システムでお金を得る必要がない人が増えるので、生活の多様化はさらに進んでいくはずです。
E 個人の能力が問われますね。
O はい。いかに多くのフォロワーを獲得しているか、画一化されていない個人の訴求力をもつかが重要になってきます。誰でもできるような作業は、AIや機械もできますから。
E 働き方の選択が個人に委ねられ、多様化した生活ではどんなことが重要になるでしょうか?
O 働き方の多様化が進めばさまざまな方法で兼業が可能になって、就労時間の制約が劇的に減ります。そこで重要になるのが〝ストレスマネジメント〞。近代まではタイムマネジメントの考え方から〝ワーク〞と〝ライフ〞の時間を切り離して、それぞれの充足を重視していました。でもこれからはその区別がなくなっていく。そうなると、ストレスのかかる仕事と少ない仕事をうまく配分して、ライフの一部として働くことが重要になります。実際19時に帰宅できる仕事のストレスが少ないかというと違いますよね。時間の問題ではないんです。
E 近年、女性役員の登用や職場での人材の多様性が注目されていますが、その点については?
O 議会などでは男女平等=50対50にしようという動きがありますが、それは近代的な考え方です。本当に多様であるならば、女性が5割という結論にならないこともある。大切なのはその場所に適切な割合を導き出すことで、キレイにならすことではないんです。〝脱標準化〞の意識をもつことが、これからのダイバーシティ化していく世界ではとても重要なことだと思っています。
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PROFILE
落合陽一さん/1987年生まれ。メディアアーティスト。博士。筑波大学学長補佐・准教授・デジタルネイチャー推進戦略研究基盤基盤長、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授を兼務。ピクシーダストテクノロジーズCEO。著書に『魔法の世紀』(PLANETS)、『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)がある。
Photo: Getty Images, Aflo Text: Kyoko Sekine(p.16) NAOKO AONO (p.19,20) MIDORI YAMAGATA (p.21) Illustration: YUTAKA NAKANE
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