HIDEO／『ハーパーズ バザー』編集部マネージングエディター

普段はカジュアルスタイルが多いなか、月に何度かはスーツ着用シーンがあります。その際は、ゼンマイで動く精巧に作られた機械式時計を合わせるのがスーツスタイルの要諦だと思っています。ゼンマイ式からは、作り手の暖かみというか、プライドを感じるのがいいんです。
 
僕のお気に入りは、愛と美の女神「ヴィーナス（Venus）」という素敵な名前のムーブメントが組み込まれた腕時計。文字盤には今はなきブランド「La Marque」の名前が書かれています。今年、横浜・六角橋商店街のアンティーク店で見つけて、一目惚れ買いしたものです。ゼンマイ式ならではのうんちくに加えて、シャンパン色の文字盤にゴールドのインデックスが、とても上品に見えたんです。
 
1960年製とおぼしきアンティークなんですが、非常に正確に時を刻んでくれ、妄想の愛と美ではありません。そして「いい時計してますねぇ」と初対面の中年男性からは大抵誉められます（笑）。自分は、ファッションは相手への礼儀でもあると考えているので、好印象をもってもらい、コミュニケーションを円滑に進めてくれる時計の存在はとても大きいと思います。
 
「Venus」を製造していたスイスの会社は、時の流れとともに形を変えてしまい、現在は存在していませんが、こういう素晴らしい製品を作っていた時代のものづくりの姿勢は、忘れないようにしたいナ、とゼンマイを巻くたびに思います。
 
ハーパーズ バザー
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