オートクチュールはオートクチュールらしく
しかし、今回「サンローラン」のオートクチュールラインは“民主化”の逆を行ったことで話題をさらった。オートクチュール復活を告知するリリースにはこう書いてある。
「この度、サンローランがクチュールサロンの復活を発表致します。『サンローランクチュール』は従来のメゾンのクチュールコレクションとは異なり、クリエイティブ・ディレクターである、エディ・スリマンが厳選した方のみにつくる特別なピースとなります」
つまり最初から選ばれた人だけしか見られないし、手にできないと宣言。そう、もともとのイヴ・サンローランが才能を発揮した時代のオートクチュールの形に戻したということ。見られないし、真似できない。メゾン側が着る人を選び、その価値がわかる限られた人のためにだけ披露する特別なピース。
モードの最高峰とは、辿れば”サロン”のモード。民主化か、はたまたその逆か。人の趣味もトレンドも細分化し、WEBですべてをシェアする昨今、オートクチュールのこの二分化は面白い動きといえる。まさに、プレタポルテの繁栄をけん引した「サンローラン」が、今回はオートクチュールの新しい流れをまたもやリードするというモードの歴史的な分岐点を目撃することに! もともとジャーナリスト志望だったというエディが、ファッション界にどんな風穴を開けて進化していくのか、今後も目が離せない。