エディターズPICK 2016/2/5(金)
早耳調査隊がゆく

必見! 究極の“おしゃれ”フェミニズム映画『キャロル』主演女優のドレスアップ

フェミニズムは今、もっとも注目される社会的テーマのひとつ。それに正面から挑んだ映画『キャロル』は、主演女優2人が劇中もレッドカーペットも最高におしゃれ。そこで今年のアカデミー賞が発表になる前に、主演・助演の両部門でノミネートとなったケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのプレミアドレス、そして映画の衝撃的な中身を予習!

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

ケイト:「Yacine Aouadi」クチュール
ルーニー:「シャネル」クチュール

2015年10月9日、第53回ニューヨーク・フィルム・フェスティバルでは、ともにブラックドレスを披露。ルーニー・マーラは「シャネル」の2015秋冬クチュールから、メゾンのアイコンであるキルティング模様がシークイン刺繍で施されたリトル・ブラック・ドレスを清楚に着こなして。スタイリングは全幅の信頼を寄せているライアン・ヘイスティング。ソフトなスモーキー・アイズとピンクリップで仕上げたメイクはケイト・リー、スリークなシニヨンヘアはブレイク・エリックによるもの。
 
このときは共演のケイト・ブランシェットも同じく黒で統一したドレスアップ。今年デビューした「Yacine Aouadi」の2015秋冬クチュールコレクションからのカスタムメイドのドレス。タトゥのようなトロンプルイユを施したボディスーツにブラックドレスを重ねたケイトにしてはエッジィなデザインのもの。スタイリングはカンヌから変わらず、エリザベス・スチュワートが担当。ただ単に髪を反対側の肩にかけたように見えるヘアスタイルは実は耳にかけた方を小さなシニヨンにまとめている。ヘアはロバート・ヴェティカによるもの。

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

ケイト:「ジバンシィ」
ルーニー: 「ジャンバティスタ・ヴァリ」

10月14日、BFIロンドン・フィルム・フェスティバルのフォトコール。ケイトは「ジバンシィ」の2016春夏コレクションからレースとサテンのホワイトのオールインワンにジャケットを羽織った男前スタイル。ルーニーは、「ジャンバティスタ・ヴァリ」の2016リゾートコレクションからフリルとレースがロマンティックな白のドレスで。

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

ケイト:「エステバン・コルタザール」
ルーニー:「アレキサンダー・マックイーン」 

同日のプレミアには女優としての貫禄を見せつける、「エステバン・コルタザール」の2016春夏コレクションからブラック&ホワイトのドレスをチョイス。ホワイトのパイピングがドラマティックなマントスリーブの後ろがオープンになっている、セクシーかつマチュアなケイトのスタイリングにはただただうっとり。
 
ルーニーは、「アレキサンダー・マックイーン」の2016春夏コレクションからお気に入りのデザインをチョイス。首元がつまったノースリーブ、ボディはゆるやかに体に沿い、柔らかなシルク素材でフリルがあしらわれている淡いピンクホワイトのドレス。ケイトの波打つマントスリーブと、ルーニーのフリルの曲線が重なる見事なコーディネートを見せた。

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

ケイト・ブランシェット:「アルマーニ プリヴェ」
ルーニー・マーラ:「アレキサンダー・マックイーン」

そして、ケイトは「アルマーニ プリヴェ」のブラックのセットアップをチョイス。実はカンヌ映画祭からほぼここまで、ケイトとルーニーのルックはすべてブラック&ブライト。お揃いになることもあるし、片方が黒であればもう一方は白、もしくは明るい色と着分けているということがわかるはず。つまりこの2人、劇中でも見事な競演だったけれど、レッドカーペットでもしっかりコミュニケーションをとって、ドレスを計算してきているということ。女優同士というと個性がぶつかりそうなものだけれど、スクリーンの外でも本当に息が合う2人だったからこそ映画が成功した、と言えるかも?
 
昨年11月14日のイベントでも、ルーニーは「アレキサンダー・マックイーン」をチョイス。こちらは2016春夏コレクションからのもので、シースルーのフリルとレースのスカートに真っ赤なミリタリー風ジャケットを組み合わせたようなエッジィなデザインがルーニーにしては珍しいルック。ノーメイクアップに見えるメイクでさらっと着こなしているのはさすが! 

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

まずポスターデザインからしておしゃれ。

そんな息ピッタリの女優が見事な演技を見せた内容も、今の時代のムードにぴったりの、まさに“ファッション”。
 
『キャロル』は長年未邦訳だったパトリシア・ハイスミスの半自伝的小説。それをトッド・へインズが映像化したこの映画は、レズビアンを単なるセクシュアリティという視点を排除したことも評価され、カンヌではすでにを賞獲得。米国ハリウッドの映画祭、アカデミー賞(オスカー)でも、以前お伝えした『リリーのすべて』『レヴェナント』と並んで賞レースの中心を担う注目作となっている。
 
ここ数年、映画賞や文学、そしてファッションも含め世界を席巻している重要なテーマ、“女性同士の連帯”を歪めることなく描き、『ニューヨーク・マガジン』誌のサイト「The Cut」では、「男性からの視点を排した稀有なレズビアン映画」、『AnOther』誌は「史上最も美しいレズビアン映画」、英国「ガーディアン」紙の映画レビューでは五つ星が付くといった最高の評価を得ている。
 
そしてなんといっても、衣装がとにかくおしゃれ。ケイトの衣装は、豊かな女性らしいエレガントかつゴージャス。ルーニーはキュートななかに強さを感じるスタイリング。もちろん第88回アカデミー賞の衣装デザイン賞にもノミネートされている。では肝心の映画の内容は? 次のページからは劇中の衣装とともに、この美しい“ファッション”映画が生まれた背景をご紹介。 

パトリシア・ハイスミス(Patricia Highsmith)

原作者のパトリシア・ハイスミス。「リプリ―」シリーズも含め、ハイソサエティな世界に生きる人物像を詳細に描いているため、ファッションの表現自体がおしゃれ。

「太陽がいっぱい」などのリプリー・シリーズで日本でも人気の米女性作家、パトリシア・ハイスミス作品のうち、唯一の未邦訳長編小説だったこの映画の原作本、「キャロル」が2015年12月8日、1952年の出版から実に63年の時を経て邦訳出版された。
 
原作者のパトリシア・ハイスミスは1921年生まれ。1942年にバーナード・カレッジを卒業すると短編を書き始め、そのいくつかは『ハーパーズ・バザー』等に掲載された。その後スランプに陥り、漫画の原作などを書いていたが、1950年、長編第一作「見知らぬ乗客」がヒッチコックによって映画化。「キャロル」は長編第二作目だった。パトリシアの母親は彼女が妊娠中に離婚。母親から「おまえを堕胎するつもりだった」と言われて育ち、愛憎が入り混じり、見捨てられ症候群に苛まれた少女時代は彼女に強い影響を与えた。

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

登場した途端に「目を奪われる」毛皮のキャロル。存在そのものがおしゃれ。

1952年、出版社の反対を受け、パトリシア・ハイスミスではなく偽名のクレア・モーガン名義で、しかも題名を変えて「The Price of Salt」として出版されたのがこの作品。しかし、その後元々のタイトル「キャロル」にパトリシアはこだわり続けた。なぜなら、この物語は、実際に1948年のクリスマス・シーズンに彼女が百貨店でアルバイトをしている時に見かけた、毛皮のコートを着た美しい女性にインスピレーションを得たものだったから。

本は最初はハードカバーで出版され、その後いわゆるパルプ・フィクションとして廉価版が販売されると100万部以上の売り上げを得た。理由はひとつ。ホモセクシュアルを題材とした作品ながら、当時としては異例のハッピーエンドで終わる作品だったからだ。その後絶版になるたびに、パトリシア・ハイスミス自身はバイセクシュアルだったが、レズビアンやクイアカルチャーの信奉者、フェミニストたちから何度も再版されることとなった。

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

世代、階級の違いを対比させた2人のデイリーウェアはそれぞれ隙がないほどおしゃれ。

今回の映画化に長年携わってきたケイト・ブランシェットはこう語っている。
 
「この映画がどの国や地域で上映されるか、それは政治的な問題ではあるけれど、この作品自体は政治的な内容の映画ではないわ。でも、もしこの映画が原作の出版当時に製作されて、全編1コマも違わない内容で公開されていたとしたら、それは非常に政治的なコンテクストとして受け止められていたでしょうね。私が演じるキャロルは欲望の対象としてテレーズ(ルーニー・マーラ)から常に一方的に見つめられている。キャロルはとても秘めやかな人。彼女は自分のセクシュアリティに関しては全く混乱していないの。彼女が悩まされていたのはどうやったらこの逃げ場のない環境を生き延びられるかということ。この映画で見られるのは誰かがそれぞれのセクシュアリティに悩むシーンではなく、2人の人間がただ一緒になる勇気を持てるように抗い続けるその姿なのよ。」

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara)

クリスマス時期の百貨店の店員という“普通のおしゃれ”を取り入れる役は、不思議な役や強烈な役を数多くこなしてきたルーニーにしては新鮮。

ルーニー・マーラは役作りに関してはまず原作を読み、トッド・ヘインズ監督が長年リサーチしてきた当時の写真を含む資料や、この映画にインスパイアされた音楽を監督が編集したCDを何枚も渡され、また何本もの映画を見るように指示されたという。そんな彼女はケイト演じる魅惑の女性、キャロルに惹きつけられる役。リアルなレズビアンの姿を演じることに難解さを感じなかったのか? と問われると……。
 
「ケイトを最初に見たときのことを覚えてるわ。『エリザベス』だったと思うけど、13歳のとき、母親と一緒に地元の映画館で彼女を見て、『オー・マイ・ゴッド、あの女の人は誰?』って思ったわ。彼女は本当に素晴らしいの。だから、お芝居で彼女に夢中になるふりをするのはとても簡単だった。それに彼女は反応が素早いし、ウィットに富んでいて、面白いの。そしてとても自信を持っている。それは素晴らしいことだわ。普通、自分の“アイドル”に出会って、しかもその人と一緒に仕事するとなると、意外に期待を裏切られるものよね。でも今回は全く違った。彼女は私が頭のなかで描いていた人とは全く違う人間で、そしてもっと優しかったの。だけど、私は明らかに彼女と一緒に仕事をするのが怖かったわ。だって、同業者のなかで一番素晴らしいと思う人たちと一緒に仕事するのよ。恐かったわ。だけど、その怖さを敢えて克服しようとはしなかったの。その怖さこそが、私たちにとって映画の中でダイナミックに働いたの。だからそのままにしておいたわ。」

キャロル Carol ルーニー・マーラ(Rooney Mara), ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)

トッド・ヘインズ監督をはさんだこの仲良し3ショットは、もはやおなじみの図。カンヌでは女優2人がかっこよく決めていた後ろで、監督のお尻をモミモミするという、ちょっとしたいたずらをするほど仲良し。

ごく最近、ヴァージニア・ウルフとヴィタ・サックスヴィル・ウェストとの間で交わされた性的な内容を含むラブレターが発見された。同じ作家で言えば、マルグリット・ユルスナールも晩年、グレース・フリックというパートナーを得ていた。パトリシア・ハイスミスの、隠されてきた物語が日本で訳され、女性の意志で映像化されたものがアカデミー賞の大舞台に堂々と選出されるようになった今、これからも「これまで語られてこなかった女性たちの物語」が次々と女性たちの手で紡ぎだされてくることを期待したい。

Text : Ryoko Tsukada

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