イヴァンカと「ミュウミュウ」と政治力

エル・エディターが私的に夢中になっているものなどをリアルな目線でお伝えする、デイリー連載OKINI! 本日は、デジタル・フィーチャー&ニュースエディターKEIICHIがイヴァンカ・トランプが着ていた「ミュウミュウ」のデザイナー、ミウッチャ・プラダと「サカイ」のレトロフューチャーなニットをご紹介。

浴びせかけられるフラッシュからビッグなサングラスでお目目をガード!

Photo : Aflo

意挽歌、来日しました。イヴァンカ・トランプです。新聞やテレビでは「イバンカ・トランプ」と表記されていますが、「ヴァ」を「バ」にしただけで、東欧由来の麗しい名前が「石狩挽歌」みたいに聞こえるので、イヴァンカで通します。
 
「え! これ選んだの⁉」と彼女のエアポートファッションに度肝を抜かれてしまいました。「ミュウミュウ」のファンシーなコートにシークインがキラキラなブラウスを重ねるとはさすがです。そして本日の「国際女性会議WAW!」でもミニ丈のピンクのセットアップ。こちらも同ブランドのもの。これまでスタイル遍歴と比べても、あれほどまでかわいいルックは稀。さすがビジネスパーソンな大統領補佐官、日本のマーケットをわかってらっしゃる?

いつもは米国人エグゼクティブの定番、スタイリッシュ&グラマラスを基本にしながら、必要に応じでまったく異なるスタイルも取り入れる勇気に脱帽しましたが、もっと驚いたのは「ミュウミュウ」を選んだところ。

ハズしがないところがアメリカ・エグゼクティブっぽく興味深いです。

Photo : Aflo

デザイナーのミウッチャ・プラダは名門ミラノ大学で政治学の博士号を取得し、かつては共産主義活動家のフェミニストであった人です。優れたビジネスセンスでも知られる(旦那さんも優秀なビジネスマン)ミウッチャは某モード誌のインタビューで「ミュウミュウ」発表の場をパリに移した理由を訊かれた際、こんなことを語っていました。
 
「『ミュウミュウ』は『プラダ』の“セカンドライン”ではないの。独立したひとつのブランドなの。女性は(『プラダ』のように)成熟したハードな女性像も、可憐でかわいい女性像も両方楽しめる。その二面性こそが女性の強さよ。」
 
英語のインタビューをフランス語に訳した記事だったはず(昔すぎて記憶もあやふや……)なので、内容が正確かどうかはわかりませんが、自身の印象操作を楽しむこと、つまりは見え方を利用することは力になるのだと堂々と言ってのけ、感動した覚えがあります。自身の個人的考え方とは裏腹にコレクションに必要なテーマを考えてきたとも表明しているミウッチャ。『WWD』にはこんなことも言っていました。

「左翼のインテリは『あんな高額で服を売るなんてどうかしてるぜ』と言うけれど、当たり前でしょ。労働者にはコストがかかるの。まっとうに人が働ける環境で服を作れば当然高額になる。劣悪な労働環境を批判しておきながら、安い服のほうが民主的だなんて偽善よ」。ごもっともです。

Photo : Getty Images

「女性が大昔からもっていた根源的な力を失わないよう努力してる。それは男性を悦ばせるような一面ね。女性は昔から、男性をおだてて操っては、いろいろなことを成し遂げてきた。私はそういうの大嫌いなんだけど、確かに女性はそういう一面ももっているの。」

 
「大嫌い」でも表現に必要であれば取り入れる。その理由を「勇気を出さないと表現できないこと」、つまりは皆が怖がって避けている表現を追求するためだと言っていたミウッチャ。社会運動の闘士であった彼女の一種の“政治力”が垣間見えたような気がしました。

フィッティング中のミウッチャ・プラダ。ちなみに隣のモデルは若かりし頃のカーラ・ブルーニ。

Photo : Getty Images

若かりし頃、政治学に闘志を燃やしていたミウッチャは、「サンローラン」を着てデモに参加。そのときと現在も姿勢は変わっていないそう。一見アンビバレントに見える行動も、よくよく彼女の思想を聞くと見事に繋がっています。意義のある二面性を操っている(ように見える)イヴァンカが「ミュウミュウ」を着て女性会議でスピーチしている姿に、勝手に奇跡を感じてしまった祝日の本日、自分も二面性を遊んでみようと思い、ボロボロのスウェットに髪の毛をボサボサにして、おしゃれさんがこぞって集まる祝日の表参道を歩くという極私的アンビバレントな行動を実行に移してみました。図らずも「iPhone X」をゲットするため長蛇の列が作られていた本日、集まったマスコミの方たちが自分を見る目は転売ヤーを見るがごとくでした。ちょっと誇らしくなりました。

ちなみにウィメンズです。

ニットの紹介いつだよ! とイライラしながらここまで読んで下さった方、ありがとうございます。こちらがわたくしめの来週のサザエさ……ではなく本日のOKINI。最近買った「サカイ」のニットです。異なる編みのニットがブロッキングされているのも面白いですが、クリアなカラーが未来的でスポーティ。とくに色の塩梅が抜群です。ちょっとでも調整を間違えるとすごくダサくなってしまうのをキワキワのところをばっちり合わせて、ほんのりレトロな温かみをまぶした「サカイ」の色彩表現に毎回圧倒。今年の冬休みはポストモダンなこの「サカイ」のニットを着て、超コンサバリッチなモンテカルロでカジノにでも繰り出してみようかと画策しています。レストランのドレスコードすら「ふさわしい服装(=空気読め!)」としか書いていない恐ろしい街なので、キワキワの挑戦ですが……。

  • Illustration : Daichi Miura

    デジタル・フィーチャー&ニュースエディターKEIICHI: 先日寝坊したため急いでシャワーを浴び、伸ばしっぱなしの髪の毛を乾かしただけで出社したら日本人の同僚から「寝起きですか?」と辱めを受けました。ですが直後にイギリス人のスタッフから「やだ、クール! Messyな髪の毛大好き。もちろん清潔なやつね」と褒められた(?)ので、頭の中はハテナマークでいっぱい。英国特有のイヤミなのか? 混乱していたらどうやら本気で言っていたもよう。「Messy(汚い)」という単語が「清潔(Washed)」と両立することを、恥ずかしながら初めて知りました。蛇足ですがとってもフェミニストな“女という幻想をぶっ壊す!本音情報サイト「messy /メッシー」”にもずっと前からハマっています。メッシー最高!

MORE TOPICS

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へエル・エディターのOKINI一覧へ次の記事へ

ELLE PR STORIES

注目ブランドをもっと見る

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト