エル・エディターのOKINI 2016/11/11(金)
エディターのOKINI by KANAKO

ピアノの旋律が心に響く映画でセンチメンタルジャーニー

エル・エディターが私的に夢中になっているものをリアルな目線でお伝えする、デイリー連載OKINI! カルチャー&ライフスタイルエディター、KANAKOが、すっかり寒くなってきた夜にまたはクリスマス、誰かともしくはひとりで(!)じっくり見たい、ピアノの旋律が心に染み入る対照的な2本の映画をおすすめ!

『天使にショパンの歌声を』 2017年1月14日より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国公開。(c)2015-8212-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

ピアノが奏でる音色ってどこかこうロマンティックで切なくて、疲れているとときどき聞きたくなるものです(そういう私は“奏子”という名前です!)。高校までピアノを習っていた身としては、ピアノに感情をぶつける情熱的な姿を見ると心がザワザワします。音楽って、うまいとかへたとか、きれいとか汚いとかそういうこと以上に感情や人生がその音に映し出されるから不思議ですよね。そしてだからこそ胸を打つのですが……。
葛藤、恋慕、悲哀などさまざまな感情をピアノ演奏にぶつけ、主人公とともにその情熱を追体験して、喜び、癒やされ、悲しむ……そんな素敵で激しい映画をご紹介!
 
『天使にショパンの歌声を』
カナダの映画です。修道院が経営するケベックの小さな寄宿学校は音楽教育に力を入れる名門女子校。ところが、修道院の財政難により学校存続の危機に! なんとか芸術への高い志を持った学校を続けたいと校長のオーギュスティーヌが奔走するなか、彼女の姪で心を閉ざした問題児アリスが転校してくる。そしてアリスにはピアニストとしての天賦の才があった……。
まず、つつましやかな寄宿学校に響き渡る合唱やピアノがすばらしいです、本当に。ゾクゾクっと、清廉な気持ちになります。少女たちの成長物語でもあり、修道女たちの人生物語でもある、広い意味でのガールズムービー! 生徒がピアノで奏でるのは、ショパン「別れの曲」、リスト「愛の夢」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調」など、恐らく誰もが聞いたことのある名曲の名曲たる美しさがダイレクトに心に響いて、観賞後速攻iTunesからダウンロードすること必至! アリス役で本作が女優デビューのライサンダー・メナードはちょっとレア・セドゥ的グラマラス感もあって今後に期待です。

 

続いては、私が大好きなフランスの監督ジャック・オディアールの作品!
『真夜中のピアニスト』
ついでに主演のロマン・デュリスも好きです。これは別に音楽映画ってわけではなくて、デュリス演じる不動産の裏ブローカーの主人公トムが日常の仕事とは対極の、ピアニストになりたいという夢を諦めきれずに情熱を燃やし葛藤する男の物語。夢を追う主人公が情熱を燃やしていく……というと美談っぽいですが、まったく真逆! そこはオディアール先生のハードボイルドでノワール的世界が広がります。不動産の仕事といっても、パリ郊外らしきアパートに不法居住する住民を暴力や時にネズミをはなって(!)追い出し、物件を転がすような汚い仕事。そんな現実に嫌気がさしていたトムは偶然、ピアニストだった亡き母のコンサートマネージャーに再会。諦めていたピアニストへの夢を再燃させていきます。
とにかく、「夢=ピアノ=清らかな音色」と「現実=生き馬の目を抜く不動産ブローカー=裏社会」という対比もドラマティックだし、その間で葛藤するトム、その葛藤を情熱としてピアノに傾ける姿が心を揺さぶりまくります。そのうえ、親友の奥さんに恋しちゃうとか、何かいつも届かないものを追いかける主人公に見るほうも枯渇した思いを追体験してしまうのです。そこがイタキモ~なんですけどね。
この映画で出てくる印象的なピアノ曲は、主人公トムがコンクールのために猛練習するバッハ「トッカータ ホ短調 BMV914」、亡き母が弾くリスト「ソナタ風幻想曲 ダンテを呼んで」。繰り返し流れるこの旋律が主人公の情熱や思いもしない展開を加速させます。私はサントラを速攻買い、且つこの2曲の楽譜まで買ってしまいました(笑)。
 
空気が澄んだ冬、ピアノの音色を心に響かせながら、映画鑑賞!

  • Illustration: Daichi Miura

    KANAKO:カルチャー&ライフスタイル エディター。海外ドラマをパトロールするのが毎日の楽しみ。ついに配信されたNetflix「ザ・クラウン」にハマりつつあります。あとは「パーソン・オブ・インタレスト」がシーズンファイナルなのが地味に残念! とにかく最近は今年から始めたフラメンコの発表会に向けて練習にいそしむ日々。足、手、顔、カスタネットを同時に動かす四重苦!

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