エディターのOKINI by KANAKO

祝芥川賞受賞!の村田沙耶香さんも描いた、セックスがなくなる未来?

エディターが私的に夢中になっているものなどをリアルな目線でお伝えする、デイリー連載OKINI! 本日、第155回芥川賞を見事受賞された村田沙耶香さんをはじめ、最近女性作家たちが描く未来の恋愛や結婚にはいわゆる現代のセックスがありません! セックスレスが話題になる昨今において、それは遥か遠い物語ではなく、そんなことになるかも?という不気味な気配を感じるのは気のせいでしょうか? 男女間のセックスと愛、そして家族、それぞれの現在のかたちに思いを馳せ、未来の行方を垣間見るような、珠玉の小説をエディターKANAKOがご紹介!

上から 『消滅世界』村田沙耶香著 河出書房新社刊 ¥1,600 『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美著 講談社刊 ¥1,500 『アカガミ』

深い洞察力と時代の空気感・ムードを言葉にできる表現力で、時として作家が描くことは時代の先をいくことがあると思います。期せずして3人の女性作家が近著でそれぞれ物語ったのは、現代とは価値観の異なる男女間のセックス、恋愛、結婚、出産、家族。人工授精が当たり前の世界、セックスは過去の遺物で忌み嫌うもの、夫婦は国の制度で出会うもの、子供はみんなで育てる国のもの……。この半年の間に出版されたそれぞれの物語の内容にところどころシンクロを感じて、ゾゾゾと何か予言されているような気持ちに。
夫婦間のセックスレスはまわりでもよく耳にする話ですし、あんなに好きで結婚した2人が性的な対象ではなく大切な家族に変わっていくのは、毎日の生活を考えれば自然な流れですが、そのかわり「外」で恋愛やセックスをしているという話もよく聞きます(笑)! 海外ならば結婚後も夫婦で恋愛できなければ離婚へ直結ですが、日本はこうなんですよね。。。村田沙耶香著『消滅世界』では、それが発展したかのように、夫婦間のセックスは「近親相姦」とみなされ、夫も妻も外に恋人を作ることが当たり前の世界ですよ! そんな今と地続きにも思える物語世界へGO!
 
『消滅世界』 村田沙耶香著 “夫婦間のセックスは「近親相姦」です”
本日めでたく芥川賞を受賞された村田沙耶香さん。受賞作は『コンビニ人間』(7月27日に文藝春秋より発売)ですが、昨年末に出版した前作『消滅世界』は度肝を抜く衝撃的な内容。『ヒトは科学的な交尾によって繁殖する唯一の動物である』。第二次世界大戦後に飛躍的に発達した人工授精で家族が作られていくもう一つの日本を描いたパラレルワールド。主人公・雨音はそんな世界では珍しい、両親の“恋愛→セックス”という“普通じゃない方法”で生まれたことに苛まれていた。誰もが初潮がきたら避妊処置をし、恋愛はアニメのキャラだったり、ヒトだったり……マスターベーションはするけれど、たとえヒトと恋に落ちてもセックスするとは限らない。この世の中でセックスは欲求を満たすものでも、必要なものでもないからだ。結婚したらもちろん夫とのセックスは「近親相姦」にあたり、恋愛は外でするもの。雨音は一人目の夫に襲われ警察沙汰のうえ、離婚した。実験都市で行われるのは男性も人工子宮で妊娠可能な、家族という制度に頼らない繁殖システム。読めば読むほど、価値観を覆させられながらも、男とは女とは、愛とは、結婚とは、出産とは、家族とは……人間の行きつく先が予見されているようで、恐ろしくもズッシリと考えずにはいられないお話です!
 
『大きな鳥にさらわれないよう』 川上弘美著 “遥か未来、100%人間由来ではない人類もいます”
こちらはもう少し遠い未来の物語。一章一章が今の私たちの世界に似ているようでいてどこかが違う。不気味なようでいてどこか牧歌的。未来も時代が前後しながら描かれていくのは、種を絶やさないために人類が選んだ命をつなぐ方法。馬由来、牛由来、鯨由来、兎由来、鼠由来など工場で製造された子供たち、無数の女に対してたった十数人の男は小さなグループで暮らす女たちのもとで繁殖を続ける、多くの母が「見守り」なって育てる子供たち、人工知能を搭載された人間、クローン、合成代謝する人間……絶滅の危機に瀕した人類は、ありとあらゆる進化、交雑を経て生き延びていく。今ですらクローンや再生技術など発展し続ける科学は種をつなぐために人類の本能が行わせていることかもしれない。男とか女とか、親子、家族、人種などを遥かに超えた未来のストーリー。川上弘美さんの創造力と洞察力が圧巻すぎて神!
 
『アカガミ』 窪美澄著 “国がパートナーを探し家族を作る制度がスタート!”
2030年の未来の物語。ってもうすぐじゃん! 恋愛もセックスも結婚も望まず、自殺率は増加、40歳まで持たないかもしれないとさえ言われ始めた若者たち。10代や20代の芸能人は少なくなり、性産業は衰退、夜の街には30代以上の人間ばかり。そんな世界で主人公の25歳のミツキもまた他人への興味はなく、恋愛もセックスもしたことがない。ある日、ひょんなことから出会った年上女性ログにすすめられて国の少子化対策として始まった、家族を作る制度「アカガミ」に申し込むことに。性格や生活習慣から最適な相手をマッチングし「番い(つがい)」となる制度。初めてする男性と2人きりの生活、初めての恋愛、初めての「まぐわい(=セックス)」……。順調に「番い」となったミツキを待つ未来は? 草食や絶食などといわれて久しい時代では、本当に近い未来の話のようにリアル。
 

『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』湯山玲子・二村ヒトシ著 幻冬舎刊 ¥1,500

三者三様の近未来をたっぷりと堪能したあとは、現実に戻って『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』を! 恋愛・セックスに一家言ある著述家の湯山玲子さんとアダルトビデオ監督の二村ヒトシさんという、男女のリアルな本音をぶつけるこの対談、読むしかないですよ。私も実は未読で、これから読もうと思ってます~。帯に「子どもを作る以外にセックスの意味などあるのだろうか?」と。やはり、日本人の恋愛・セックスはどんな未来に向かうのか、岐路に立っているのかもしれませんよ!(他人事ではない!)

  • KANAKO:カルチャー&ライフスタイル エディター。海外ドラマをパトロールするのが日々の楽しみ。最近のお気に入りは、アイスランドのドラマ『トラップ 凍える死体』(AXNミステリー)。長いパリ取材から帰国して、万年上達しないフランス語熱が再燃! Skypeレッスンと仏TV局ニュースをスマホで聞きながら燃えています! パリのホテルの部屋ではフラフープやってました(もちろん持参)。

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