インタビュー 2015/7/2(木)
Eros in French Movie

仏女性監督が解説! フランス映画に見るエロティシズム

フランスの田舎町を舞台に、年下男との不倫に走る人妻と、彼女の恋を“覗き見”するパン屋の店主を描いた最新作『ボヴァリー夫人とパン屋』が7月11日(土)に公開されるアンヌ・フォンテーヌ監督。これまでも『美しい絵の崩壊』など、独特のエロスの世界を描き続けてきた監督に、フランス流の官能についてインタビュー!

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『ボヴァリー夫人とパン屋』より。(C) 2014 - Albertine Productions - Ciné-@ - Gaumont - Cinéfrance 1888 - France 2 Cinéma - British Film Institute

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現実よりも妄想のほうが自由でいられる

『美しい絵の崩壊』では親友の息子と恋に落ちる母親のタブーを、『恍惚』や『ドライ・クリーニング』ではアブノーマルな性愛にのめり込んでいく人々の姿を描いてきたアンヌ・フォンテーヌ監督。最新作『ボヴァリー夫人とパン屋』は、フランスの田舎町ノルマンディーを舞台に、退屈した日常から不倫に走る美しい人妻と、彼女を小説のヒロインに重ねて妄想を膨らませていくパン屋の店主を、ユーモラスかつ官能的に描いたドラマ。
 
―この原作を映画化しようと思ったきっかけを教えてください。
原作本の表紙を見たときに、まず人物の表情とタイトルに惹かれたの。そしてストーリーはセンシュアルでエロティック。ここで描かれるエロティシズムは、妄想を介した間接的なものだという部分が面白いと思ったわ。主人公は現実の女性に心を揺り動かされてるんだけど、そこにフィクションの人物を重ねているという仕立てが気に入ったの。 
 
―パン屋の店主・マルタンにとって、若く美しいジェマと実際に触れ合うよりも、妄想することが大きな意味をもっているんですよね。
そうね。彼に限らず、どんな人にとってもエロスにおいては妄想のほうが強い部分はあると思う。なぜなら現実の接触は失望に終わる可能性があるけれど、妄想ならば自由に、好きなようにできるから。男性を見ていて私が思うのは、男性は女性に対して、実際に触れるというダイレクトな行為よりも、見つめたり、夢を見たりすることに喜びを覚えるんじゃないかしら。ある意味、映画作りというのもエロティックな行為で、自分が抱いているイメージを、心理学でいうところの転移(トランスファー)として映画のなかのフィクションに置き換えることなの。
 
―妄想することにおいて、男女の差はあると思いますか?
男女の差というよりも、個人的なところが大きいから、人によって違うと思うわ。傾向として男っぽい妄想、女っぽい妄想はあると思うけれど、とても主観的なものだから一般化するのは難しいわね。ただ、どちらかといえば男性の妄想のほうが目に見えやすくて、女性のほうはより隠されていてミステリアス、複雑だと思うわ。
 
―あなたにとって、官能を描くのに欠かせないエッセンスは何ですか?
官能映画においては、それはちょっとしたジェスチャーだったり、肩だったり、うなじだったり、視線であったりするんだけど。重要なのはそれが意図したわざとらしいものではなく、「ついやってしまった」というような、その人から思わずあふれ出してしまった部分が官能の鍵ね。私は映画監督として、その瞬間をどうカメラで捉えるか、が仕事だと思っているわ。
 
―この映画でも、ヒロインがパンをこねるシーンはとてもエロティックでした。
あのシーンは明らかにエロティックに撮ったわけだけど、ジェマを演じたジェマ・アータートンはとても魅力的で、そこにいるだけで周囲の温度が上がるような女性なの。セクシーに見せようとして実際にセクシーな女性もいるけれど、彼女の場合はとても自然体。一見、寛大で優しい雰囲気だけど、それでいて肉感的で官能的。スリムな女性がもてはやされる現代においては、肉体的にも存在感がある、とても珍しいタイプだと思うわ。

  • 『ボヴァリー夫人とパン屋』
    監督/アンヌ・フォンテーヌ
    出演/ファブリス・ルキーニ、ジェマ・アータートン
    配給/コムストック・グループ
    公式サイト/http://www.boverytopanya.com/
    2015年7月11日(土)~、シネスイッチ銀座ほか全国公開

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photo : Miki Takahira(P2)

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