ソーシャルメディアを侵食するフィルター文化、どう思う?
ソーシャルメディアに写真をアップする際に欠かせないフィルター加工。ツイッターでも最近、新たなステッカー機能やフィルター機能を追加すると発表したばかりだけど、本当にこれって必要なの? UK版エルのデジタル・ライター、ケイティ・オマリーがちょっぴり真面目に考察。
舌を出した犬や、花の冠、ぎょっとする口から虹を吐き出す、といったエフェクトがかけられていない、普通の写真が最後に友達から送られてきたのはいつだろう。今日だけで、私はスナップチャットのフィルター加工済みセルフィーを4つ受け取っていて、それは目からイラストの涙を流しているものから(彼女はまだグラストンベリー・フェスの気分を引きずっている模様)、美肌加工で誰が見てもきれいなルックスのものまでさまざまだ。1億人のユーザーを持つスナップチャットとその絶えず変わり続けるフィルターは人々のコミュニケーション方法を変化させた。我々は電話やテキストで"リアルな"会話を行う代わりに、日常生活を切り取った即席のスナップ写真をシェアすることを奨励されている。
だが、数か月以内に様々なステッカー機能(基本的には新しいフィルター機能)を追加するというツイッター社の発表は、次のような疑問を投げかけた。ソーシャルメディアにおけるフィルターは無邪気な楽しみか、それとも非常に危険なもの? あるいは自己愛のための薄いヴェール? 私からしてみれば、ソーシャルメディアのフィルター機能については正直、我慢の限界に近い。友達とディナーしていたり、会話している最中に、彼らが自分のセルフィーにかけるフィルターを選ぶためにわき目も振らず没頭していたことは数えきれない。自分の見た目を評価したり、セルフィーを撮ることは悪いことだとは思わないが、人々に自分たちを見せるための"完璧な"レンズを選ぶために時間を浪費することは、面白くするためでも、自尊心を満たすためであっても、不可能な美の基準への危険な拡張だし、一定の外見についてのプレミアを高めることになるだろう。
多くのフィルターはセルフィーの楽しい側面を担っているが、中には我々の自信を毀損する可能性があるものもある。例えば、花の冠のフィルターは、同時にユーザーの肌のトーンを明るくするようになっている。多くの人々はそれは自分たちをより魅力的にするためのものだと信じているが(ライティング効果を加え、肌の傷を無くし、肌を脱色し、テクスチャーを整え、ソフトフォーカスにする)、それは不必要に肌を白くして、顔の特徴を減らし、非現実的で到達不可能なバージョンの自分たちを描き出している。
我々は誰もが、うらやましいライフスタイルを友人やフォロワーたちに見せたいという罪を犯している。人々はいつだって二日酔いよりもパーティーの様子を投稿したがる。しかし、ソーシャルメディアにおけるフィルターの浸透によって、我々は自意識を失いつつあり、関心は内面に向かっているのだろうか? フィルターが災いのもとか、あるいは予期せぬ賜物なのかを検討すべく、エル・チームに意見を聞いてみた。
<賛成派>
ウンサ・マリク, ソーシャルメディア・マネージャー
「スナップチャットって要するに楽しんで、ちょっとふざけるためのものでしょ。彼らが提供しているフィルターについても同様に考えてるわ。誰かが、フォトショップでいじったようなセルフィーを撮ったからって(花輪やエイリアンみたいな顔の形になるフィルターを想像して)、それが何か問題かしら? 気に入らなければ、自分が使わなければいいだけの話よ。」
ビビー・ソーレイ, デジタルニュース&フィーチャー・エディター
「オイオイ君たち、単なるフィルターだよ。」
<反対派>
レナ・デ・カスパリ, カルチャー・ディレクター
「このかなり憂鬱な時に、もし人々が花の冠や犬の耳をセルフィーに着けることで笑って、自分たちを元気づけたいと思っているなら、私は反対。今、世の中にあるフィルターが、もっとおしゃれだったらいいのに、と思うわ。誰か私にフリーダ・カーロの眉毛とか、ロージー・ザ・リベッターのヘッドスカーフとか、グロリア・スタイネムの右こぶし、パティ・マギーのスケートボードみたいなフィルターをくれない? そしたら、何にでもフィルターを使うわ!」
ナターシャ・バード, デジタル・コンテンツ・エディター
「深く考えすぎだと思われるかもしれないけど、私はいくつかのフィルターについては長い目で見たときに若い女性たちに及ぼす影響を考えてるわ。より白い肌、完璧な肌の色つや、大きな子犬みたいな目を好む文化のことよ。ある意味、それは子ども扱いしているし、同時に人種的にやや侮辱しているといえるし、話が飛ぶけど、昔から女性たちはしばしば汚れのない、別世界のようなピュアさ、完璧さをありがたがってきたわ。今こそ、ソフトフォーカスされた森の世界のニンフみたいに見せようとすることをやめて、リアルでユニークで、多様な女性であることを祝福するべき時じゃないかしら。」
Translation & Text: Naoko Ogata Photo: Aflo、Getty Images