不倫当選、夫妻W拘留、復縁デート……。作家・鈴木涼美が斬る「女の事件簿2017」
2017/12/29(金)
> <

1/4

山尾志桜里議員

事件ファイル1

男の特権は過去の遺物に? 山尾議員の不倫当選で見えた光

「父親の不倫はまだ許せても、母親の不倫は想像するのも恐ろしい」。一昔前の男の子たちは、大変自分本位で都合のいい、しかし正直なそんな気持ちを口にすることが多かったように思います。だからこそ、男性有名人の不倫スキャンダルがときに笑いのネタや男としてのひと皮向けた感じにすら受け取られるのに対し、女性有名人の不倫はひたすら罪深く断罪され、キャリアやイメージを台無しにするものとして捉えられることが多かったのではないでしょうか。

さて、バラエティ番組などで復帰し、相変わらず明るい発言でキャリアを取り戻したベッキーさんをはじめ、今年は不倫スキャンダルが報道された女性の復活劇が華麗に花開いていたように思えます。特に、スキャンダル直後に選挙に出馬し、当選した山尾志桜里議員については、ある意味女性らしい、清々しい逞しさすら感じました。

山尾議員の、不倫報道冷めやらぬなかの堂々とした姿は、「節操がない」「恥知らず」といった評価よりも、清々しいと受け取られ、当選につながったような気がします。それは彼女の政策や思想は、不倫報道とは全く別の場所で積み重ねられてきたという信頼に足るものだったことに加えて、彼女が下手に不倫で落ち込んだり逆にそれを利用したりせずに、切り離して仕事に邁進したからではないでしょうか。

正直、不倫否定論者であったとしても、そういったプライベートな過ちがキャリアまで奪ってしまうことに違和感を感じていた人も多いのではないでしょうか。一時期活動を停止せざるを得なかったベッキーさんのように、男と女の問題が、ある意味全く関係ない部分で積み上げてきたものに対して制裁を与えてしまうことがあまりに残酷だという認識があったからこそ、彼女の復帰が暖かく迎えられているような気がします。

スキャンダルはスキャンダルで問題にしながらも、一方できちんとキャリアを積み上げていく女性の登場は、かつて不倫スキャンダルに真摯に謝りつつ、大統領としての責務を全うしたクリントン元米大統領の姿が重なります。それは不倫なんていう不誠実な行為を芸の肥やしなんて言って開き直るおじさんたちよりも、ずっと潔くプロフェッショナル意識の高い態度かもしれません。

Text: Suzumi Suzuki Photo: Getty Images, Aflo

  • 鈴木涼美/社会学者、作家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。記者として在籍した日本経済新聞社を退社後、執筆業を中心に活動。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)や『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)、『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新の著書は今を生きる女性のお金の使い道や稼ぎ方について評した『オンナの値段』(講談社)。
    Twitter:@Suzumixxx
    http://lineblog.me/suzukisuzumi/

MORE TOPICS

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト