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美しくもロマンティックでもないセックス

この映画は、パリに留学している中国人のアラサー女性が、パリと中国を行ったり来たりしながら、あっちでもこっちでも、いろんな男の人とやっちゃったっていう話です。こういう女の人、けっこういるよね。どの男のものにもならない。美人だし、フェロモンが出てるし、モテています。だけど“自由”かというと、そうではない。心に深い空虚を抱えている。
 
宣伝文句だけ見ると、なんだか美しいフランス青年とアジアンビューティーの破滅的なラブストーリーかと思うけど、実は冴えない男女の話で、僕は大いに共感できました。いや皮肉ではなく、幸せになれない男女を描いた、とてもいい映画だと思う。フランスは恋愛の国だし、中国も性生活に凝る文化の長い歴史があるのに、この2人は気持ちよさそうなセックスをしないんです。ここには、はっきりいって“愛”はまったく描かれていない。でも、あなたが考える愛って“作られた物語”のことなんじゃないの? って観客に突きつけてくるわけです。彼ら(我々)は美しくもロマンティックでもないし、めくるめくセックスとは出合えない。
 
ヒロインのホアは、最初は被害者意識を持っていて自分を捨てた男にすがりつくところから映画は始まるんだけど、彼女はその男に捨てられたトラウマから男性遍歴を重ねるわけではなく、ただ最初から“そういう人”なんです。恋愛への衝動を抑えられず、自分からダメな男のところに行ってダラダラとした関係を続けて、無意識に相手の“心の穴”を広げていく。ダメな男を見つけるのがうまいんです(笑)。で、彼女に引っかかったフランス男のマチューは、“支配できる女”が好きなタイプで、どこにでもいる普通の男ですが、やがて彼の方が恋愛依存の女の子のようにメンヘラになっていくという……。

  • 『パリ、ただよう花』
    監督・脚本/ロウ・イエ
    出演/コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム
    配給/アップリンク
    公式サイト/http://www.uplink.co.jp/hana/
    2013年12月21日(土)~、渋谷アップリンク、新宿K's シネマほか全国順次公開

「【第2回】『パリ、ただよう花』に見る、めくるめかないセックス」トップへ
  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)も好評発売中。
    http://nimurahitoshi.net/

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