特集 2015/1/20(火)
二村ヒトシの映画でラブ&セックス考

【第15回】『ラブストーリーズ』を反面教師とした、男女関係を長続きさせる秘訣とは?

『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』『すべてはモテるためである』などの著書で恋愛とモテについて説き、アダルトビデオ監督としてあくまで女性目線での作品づくりに定評がある“女性と性”のエキスパート、二村ヒトシさん。そんな二村さんが毎月1回、新作映画からラブ&セックスを読み解く連載。第15回は、あるカップルの別れから再生を男女それぞれの視点で描いた2作品『ラブストーリーズ エリナーの愛情』『ラブストーリーズ コナーの涙』を斬る!

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恋愛で孤独になる理由って?

NYを舞台に「ある夫婦の別れと再会を、男女それぞれの視点から描いた」、同じ監督、もちろん同じキャストによる2本の映画が同時公開。主演はジェシカ・チャステイン&ジェームズ・マカヴォイで、『ラブストーリーズ エリナーの愛情』は妻の側から、『ラブストーリーズ コナーの涙』は夫の側から描いています。原題と邦題のギャップに、日本での配給を担当するスタッフさんの苦労が偲ばれます。
 
幼い子どもを失ってしまったことで心に傷を負った妻のエリナーは家を出る。夫のコナーは彼女を探し出すわけですが、その間、離れているときだけじゃなく一緒にいるときでも、同じ出来事を体験していても、お互いの心のなかで起きていることや見えている世界は全く違う。男と女が付き合うとき、それぞれの視点によってひとつの事件が別の物語になるというのがミソなのでしょう。監督がやりたかったことはとてもよくわかる気がしました。
 
人間は誰しも、それぞれが“主観”で生きているのだという事実。ふたりが会話する場面で、同じセットで撮影しているのに2つの映画で微妙に台詞が変わっていたり、行動の順序が変わっていたりという演出で、それが表現されます。夫が主人公である『ラブストーリーズ コナーの涙』では、ふたりがまだ結婚前で仲が良かった、幸せだったときのエピソードから映画が始まりますが、共犯でやった悪いことが、実は片方が嫌々やっていた、あるいは、そのときはノリノリだったのに後になって自分の記憶が改ざんされてるみたいなことって、よくありますよね。特に恋愛に顕著ですが、仕事とかでも。
 
男女のすれ違いを描いた先行作品には『ブルーバレンタイン』という素晴らしい映画がありましたが、なぜ人間が孤独になるかというと「他人の視点に立てないから」だと思います。恋愛や結婚で孤独を感じるのも、相手と視点を共有できなくなるからでしょう。恋愛って結局、 違う家庭、違う背景、違う心の傷をもったふたりがひとつの出来事を体験することです。でも人間はひとりひとり、ものの見方はまったく違っていて、最初はその“違っているところ”にこそ、惹かれ合ったりする。それがまさに、僕がいつも言う“心の穴”です。
 
でも、相手の視点に立てちゃったがゆえに絶望して別れなければならなくなる、なんてこともある。そもそも他人と「愛し合う」ことなんて、しかも愛し続けていくことなんて、可能なんでしょうか?

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  • 二村ヒトシ/アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應大学文学部中退。1997年にAV監督デビュー。痴女もの、レズビアンものを中心に独創的な演出のアダルトビデオ作品を数多く手掛けるかたわら、『すべてはモテるためである』(イースト・プレス刊)、『恋とセックスで幸せになる秘密』(同)などの著書で、恋愛やモテについて鋭く分析。女性とセックスを知り尽くした見識に定評がある。最新刊『淑女のはらわた』(洋泉社刊)、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(文庫ぎんが堂刊)も好評発売中。
    http://nimurahitoshi.net/

  • 『ラブストーリーズ エリナーの愛情』
    『ラブストーリーズ コナーの涙』
    監督・脚本/ネッド・ベンソン
    出演/ジェシカ・チャステイン、ジェームズ・マカヴォイ
    配給/ビターズ・エンド、パルコ
    公式サイト/http://www.bitters.co.jp/lovestories/
    2015年2月14日(土)~、 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

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