数値で判明! “理想の女子像”が若者を抑圧する日本の実情
「女尊男卑だ!」と言われるまで力をもったと言われる日本人女性。それって本当? 世界最大の広告会社グループWPPの中核企業、ジェイ・ウォルター・トンプソンが世界中で実施した調査でわかったのは、一元的な“あるべき女性の生き方”像が、若い女性達の閉塞感を生み出している日本の現状。そんな“不都合な真実”を同社ディレクターの大橋久美子さんが解析!
“あるべきライフコース”が夫&出産に一元化
「クォーターライフクライシス」という言葉を最近耳にするようになりました。20代後半~30代の人たちが自分の夢の追求と結婚・出産という、次のステージへのタイムリミットが迫る中で陥る葛藤のことを言います。ネットワークが発達した現代だからこそ、SNSでの友人の充実っぷりが焦燥感をあおり、体力の衰えの実感が不安を加速させるのです(女性の多くは20代後半から筋力・ホルモン量が低下し始めるため)。
欧米では、多様なライフコースの可能性があるにも関わらず卵子老化という体内時計が待ってくれないことが葛藤要因のようですが、日本においては状況は異なります。
「25~34歳における人生のプライオリティ」の回答を見てみると、日本においては“出産・育児” と“パートナー”が突出して高いということがわかります。キャリアやお金を稼ぐこと、家を所有すること、起業すること……クォーターライフ世代にはまだまだいろんなプライオリティがあるはずなのに、日本女性にとっては“パートナー”と“出産・育児”こそがこの時期の最重要課題であり、それ以外のことは付帯的なことに過ぎないという価値観がここには表れているようです。
つまり、今の女性たちは多様なライフコースが選択できる時代に生きているなどと言われている巷の言説とは異なり、そして、確かにいろんなライフコースの人がいるのも事実であるけれど、そんな現実とは別に“あるべき女性の生き方”は一元的になり、それがクォーターライフ世代のプレッシャーとなっていることが浮かび上がっているのです。
Text: Kumiko Ohashi
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※日中米英印等14カ国/18~70歳女性各国500人/人口による年齢割付/オンライン調査/2016年実施
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大橋久美子/東京大学文学部社会学科卒、博報堂マーケティング局、研究開発局を経て、2003年ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンに入社。広告業界で25年、アジアや日本の女性たちと向き合いながら、女性たちを輝かせるためのブランディングを行う。