特集
2016/12/19(月)
福田フクスケの「ドラマのようには生きられない」 Vol.1

「恋人のおいしいところだけが欲しいんです!」――“踏み込まない男性”に萌える「逃げ恥」世代の恋愛スタンス

“くすぶり男子”“ノマドセックス女子”などの名キャッチを生み出し、タレント批評から差別問題まで硬軟織り交ぜたコラムで編集業界に旋風を巻き起こしている編集者・ライターの福田フクスケさん。脚本家や演出家まで必ずチェックするドラママニアでもある福田さんが、旬のTVドラマに見る男女関係を考察する連載がスタート。初回は2016年最大の成功を収めたTBS「逃げるは恥だが役に立つ」を読み解く。

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(c)TBS

平匡の“自己防衛の壁”は長所か? 欠点か?

劇中、みくりは平匡のことを「恋愛における自尊感情が低いあまり、深い関わりから逃げようとする人」(第5話)と分析する。このように、自意識の檻に閉じこもって周囲に壁を作り、恋愛を回避しようとする男性は、これまで“面倒くさい”“情けない”“頼りない”ヤツとして説教部屋行きの対象であり、自己変革を迫られる存在だった。
 
代表的なのが、2010年に放送された「モテキ」の藤本幸世(森山未來)。彼は、女性からモテなかった被害者意識をこじらせるあまり、自分が傷付かないように自虐と卑屈さで自己防衛するキャラ。そのせいで、せっかく好意を寄せてくれた女性たちを、かえって傷付けてしまう。
その痛々しい姿に、女性は「こういう男いるわ〜」と溜飲を下げ、男性は「これは俺のことだ」と心をえぐられたものだった。
 
一方、2016年における「逃げ恥」の平匡はどうだろう。刺激よりも平穏を愛し、相手と一定の距離感を保って不用意に心に踏み込まないし、踏み込ませない。そんな平匡の繊細さと慎重さを、本作では“男らしくない臆病者”ではなく、あくまで彼の“好ましい人間的魅力”として描いているのだ。
 
むしろみくりは、そんな彼だからこそ「かわいい」と萌え、“共同生活の理想のパートナー”として選ぶのである。

Text : Fukusuke Fukuda

  • フリーライター・編集者。「男の自意識」を分析したジェンダー論を華麗に差し込みつつ、幅広いカルチャーを斜めから分析したコラムでオンライン上でまたたくまに人気を得る。雑誌『週刊SPA!』『GetNavi』、webメディア「SOLO」「マイナビニュース」などで執筆中。
     
    Twitter @f_fukusuke 

  • (c)TBS

    「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)
     
    派遣切りに遭った森山みくり(新垣結衣)は、ひょんなことから津崎平匡(星野源)と契約結婚をすることに。この契約は、雇用主として平匡がみくりに月給を払い、みくりが被雇用者として専業主婦になるというもの。2016年最大のヒットドラマとなっている、結婚と仕事の現実を斬る痛快コメディ!
     
    公式HP http://www.tbs.co.jp/NIGEHAJI_tbs/
    公式twitter @nigehaji_tbs
    公式instagram  @nigehajigram

      

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