特集
2016/06/08(水)

音楽と官能。私たちの生活に欠かせないこのふたつを、音楽に精通するエッセイストでありディレクターの湯山玲子さんが大胆に、かつ深く語りつくす連載「エロスと音楽」。第5回目は、玉置浩二とカエターノ・ヴェローゾの歌声に共通する“心のチューニング効果”を読み解きます!

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「恋の予感」が収録された安全地帯のサードアルバム『安全地帯III~抱きしめたい』

快感中枢を直撃する“歌声”のチューニング効果

ヒマがあれば、 YouTubeネットサーフィンを楽しんでいる今日この頃だが、先日、私の音楽人生の中でも屈指の大発見があった。それは何かと言いますと、なななんと、安全地帯の玉置浩二というアーティストのことなのですよ。
 
ネットサーフィンの面白いところは、入り口は全く別の調べものだったのに、まさかの運命の出会いが待ち受けているところ。その日のそれは、ちょっと依頼された原稿の中で坂東玉三郎の存在に触れなければならなくなって、彼のことを探っていたときのこと。たどり着いた音楽番組は、玉三郎が自分の好きなミュージシャンを招いて、トークや実演を披露するというもの。玉三郎が好きなミュージシャン、というのは、玉置浩二で、そう、私は彼が生ギター一本の弾き語りで歌う「恋の予感」に釘付けになってしまったのだ。
 
今まで多くのカルチャー表現に出逢ってきた経験を経た身としての、善し悪し判断はジャンルなどとは関係なく「目止まり時間」にあると思っている。要するに、その表現を目にし、耳にしたときにその場を離れられなくなってしまうかどうか。その映像での玉置浩二はまさしくそういう存在、だったのだ。
 
申し訳ないが、玉置浩二に対する私の印象は、非常にぼんやりしたものだった。薬師丸ひろ子の元夫であり、石原真理子とも付き合って、いろいろあって、元C.C.ガールズの青田典子と結婚し、ベッドイン写真を雑誌に掲載した、というお騒がせタレントというイメージが大半。「ワインレッドの心」はもちろん知っているが、その曲に魅了されたという経験もない。 
 
それが、どうだ!? 「なぜ なぜ あなたはきれいになりたいの」という歌い出しの、歌詞としては唐突な、しかしそれだからこそ、心のツボに突き刺さる「直接話法」と、「まるで、深夜の恋人からの電話」のような静かで甘やかな声が、私の心を引き留め。その曲が「恋の予感」ということを知ったのだ。

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