特集 2015/4/9(木)

音楽と官能。私たちの生活に欠かせないこのふたつを、音楽に精通するエッセイストでありディレクターの湯山玲子さんが大胆に、かつ深く語りつくす連載「エロスと音楽」。第二回目は、湯山さんが愛してやまない、ユーミンこと松任谷由美の音楽が予見した、現代的男女関係について分析。「男女の間に友情はない!」なんていう意見が古臭いものになりそう?

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荒井由美「YumiArai1972-1976」 限定生産 荒井由実BOX 5CD+1DVD(BONUS DVD)

Yumi Arai 1972-1976

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音楽は人生を占う

音楽には「よく当たる占い師」のようなところがある。
 
どういうことかというと、「あっ、この世界を私はこれからの人生で追求していくんだろうな」という予感。言い方を変えると「私はこの音楽のような世界でずーっと生きていくのだろうな」ということを音楽に言い当てられ、実際の人生がそうなってしまうようなことがあるのだ。
 
パンクロックに魂を持っていかれた人間は、それ以降、サラリーマンをしながらも、パンク精神を心のなかに持ち続けるし、ショスタコーヴィチが好きだった人は、60歳を過ぎても「革命」と聞くと血が燃えたぎってしまうのだ。
 
私にとってのそれは、そのころは荒井由実と称していたユーミンの「コバルトアワー」という曲に終始する。その出会いのときのことは今でも鮮明に覚えているのだが、中学1年のあの夜、寝ようと思って深夜放送ラジオのスイッチに手を伸ばしたときに、ふと「じゃあ、あと一曲だけ」と手を引っ込めたことがウンのつきだった。
 
飛行機の爆音から始まるその曲を聴いたとたん、私はそう、松田優作ではないが「なんじゃ? こりぁ」状態になってしまったのです。私にとってこういった優作的衝撃はアート部門において、あんまり訪れないのだが、考えてみれば、このときがその人生お初の体験。私はベッドから飛び起きて、勉強机の上のノートに、「荒井由実のコバルトアワー」と走り書きし、その週末、お小遣いを握りしめて、吉祥寺の新星堂にアルバムを買いに行ったのはいうまでもない。

「【第2回】ユーミンが予見したセックスに頼らない男女の絆」トップへ
    • 湯山玲子(ゆやま・れいこ)/著述家。ディレクター。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。学習院大学卒。サブカルチャーからフェミニズムまで横断したコラムで人気。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)などがある。最新作『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(角川書店)では、“男のこじらせ”を分析し、ヒット中。
       
      公式ホームページ/http://yuyamareiko.blogspot.jp/

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