山崎まどか×山内マリコ“2016年、私たちが愛した映画のはなし”
2016/12/05(月)
> <

6/7

写真上/『リリーのすべて』(DVD発売中)、写真下/『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(12月21日DVD発売) Photo: Aflo (c)2014 InterActiveCorp Films, LLC.

女子心をザワつかせる個性派アクターたちの活躍

――今年は、イケメンというより個性派俳優が目立ちましたね。『リリーのすべて』のベン・ウィショー、『ブルックリン』のドーナル・グリーソン、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』のアダム・ドライバーとか。

山内:『リリーのすべて』はエディ・レッドメインより、ベン・ウィショーがよかったです。

山崎:ぐいぐい迫ってくるのに、リリーが「あれを取って女になったの」って言った途端、「ふーん」って興味を失っちゃうところが大好き。男のお姉さんが好きだったのね、という。今年の裏ベン・ウィショーのベストですね。ベレー帽かぶってくるウィショーにも大爆笑。これと独身者が動物にされちゃうシュールな映画『ロブスター』のボーダー姿が、ベスト・ウィショーでした(笑)。

山内:『リリーのすべて』は、『君と歩く世界』のマティアス・スーナールツも出てましたね。

山崎:彼は私のまわりで、いま一番セクシーって騒がれてますよ。

山内:プーチン顔ですよね(笑)。ちょっと変わった感じの顔。

山崎:アダム・ドライバーとマティアス・スーナールツは、珍味セクシーの二大巨頭ね。『ヤング・アダルト・ニューヨーク』は実は私と長谷川町蔵くんが去年書いた『ヤング・アダルトU.S.A.』という本のタイトルから、映画会社が邦題をつけたんです。原題は「WHILE WE ARE YOUNG」。邦題の評判がよくないんですが、私たちがこうしてほしいって頼んだわけじゃない、ってことは声を大にして言っておきます!(笑)。監督のノア・バームバックがOKを出したんだから。私はこの監督は自分のアルターエゴかと思うくらい思い入れがあるんですが、今回は商業的な側面もあってよかったと思う。

――ベン・スティラーのぱっとしない映画監督というのも、ぐっときました。

山内:ベンが監督出演した『リアリティ・バイツ』を、バイブルかってくらい何度もリピートして観てたので、その彼が中年の悲哀を描くのは感慨深いですね。ベンも自分も年取ったんだな~って。

山崎:ベンの上からも下からもやられっぱなしですよっていう満身創痍さがぴったり。

山内:アダム・ドライバーの少し気味が悪い感じも。

――アダムはベン夫婦に近づいてきて、他人の人生を盗んで行く男ですよね。

山崎:ベンは、若いアダムが自分たちを隠し撮りしていたことに怒って「あれはドキュメンタリーとして間違っている」って正義感的に怒るけど、妻のナオミ・ワッツは「あれも彼の作品なのよ」って諭す。あそこもよかった。この夫婦の気持ちは、もう本当によくわかる。年下の人に慕われて「これで自分も子供じゃない」と実感するところとか。大人になれない、って感じているのは自分だけじゃない、というのはとても救われましたね。

山内:『ブルックリン』のドーナル君もよかった。あのババアさえいなければ!

山崎:『ブルックリン』、『エクスマキナ』、『レヴェナント』は三大ドーナルかわいそう映画。

Text: AYAKO ISHIZU

  • 山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。

  • 山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。

MORE TOPICS

SHARE THIS ARTICLES

前の記事へ特集一覧へ次の記事へ

CONNECT WITH ELLE

エル・メール(無料)

メールアドレスを入力してください

ご登録ありがとうございました。

ELLE CLUB

ようこそゲストさん

ELLE CLUB

ようこそゲストさん
ログアウト