山崎まどか×山内マリコ“2016年、私たちが愛した映画のはなし”
2016/12/05(月)
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写真上/『永い言い訳』(公開中)、写真下/『海よりもまだ深く』(DVD発売中) (C)GENIUS FILM PRODUCTIONS LIMITED2015. ALL RIGHTS RESERVED., 2016「永い言い訳」制作委員会 (C)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ

日本映画に脈々と系譜するダメ男は2016年も健在

――『永い言い訳』や『淵に立つ』など、日本映画もランプリング並みに“さざなみ”が立つ夫婦の話がよかったですね。

山内:『永い言い訳』、すごくよかったです。深津絵里さんが、最小の仕事で最高の仕事をしていたと思いますね。美容師の役で、最初に髪を切るシーンがすごくうまくて。その後、すぐ死んでしまうから出てこないんだけど。本木雅弘さんも独特で、あまり尊敬されていない作家というのにマッチしてた(笑)。根本的には薄情な男がどこまで人間レベルに近づけるのか、という話で、自分もそこを自覚している。友人の子供の世話をしていて「こんなことで人間らしくなった気になっているなんてダメだ」ってわかっているんだけど、それでもあったかいものを感じる。はっきり成長しないのもいいし、子役がとてもいいんです。

――撮影もよかったですね。16ミリのフィルムで撮っていて、質感が少しざらつくのも、独特の世界を作っていました。

山内:フィルムだったんですね。納得しました。

山崎:今年はカメラ大事、っていう映画が多かった。モックンは海外に行けばいいのに。阿部ちゃんも。

山内:阿部ちゃんといえば『海よりもまだ深く』もすごくよかった。日本映画はダメ男を主人公にしすぎ、って思ってたけど、阿部ちゃんのダメ感は愛らしくて、これはしょうがないな、と(笑)。別れた奥さんが忘れられないダメ男。この映画の魅力は、言葉でうまく伝えられない。

――阿部ちゃんは作家くずれで、モックンはテレビで人気の作家。どちらもダメな男で、『永い言い訳』と表裏になっている部分もありますね。何より、団地で暮らすお母さん役の樹木希林が自分の母親に見えてくるくらい、やたらにリアルで。

山内:こちらはコメディなんですよね。樹木希林さんと阿部ちゃんの掛け合いだけで、ずっと見ていられる。団地映画でもあって、是枝監督が実際に団地育ちなのですごく撮り方がいいんです。

――お母さんは団地で一生を終える、ということに少し諦めがあって。何よりジップロックの使い方がうまいんです。

山崎:それは見ないといけない!(笑)

Text: AYAKO ISHIZU

  • 山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。

  • 山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。

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