山崎まどか×山内マリコ“2016年、私たちが愛した映画のはなし”
2016/12/05(月)
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写真上/『オデッセイ』(DVD発売中)、写真下/『レヴェナント~蘇えりし者』(DVD発売中) photo: Aflo (C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved. 

マットVSレオ?! 絶望的な状況で生き抜く自活映画対決!

――女性の生き方を描いた映画が多かった一方で、絶望的な状況下で生き抜く男を描いた『オデッセイ』も、今年の代表作だと思います。

山崎:リドリー・スコットが死んだ弟のトニー・スコットに寄せてきたというか、すごく力強い映画になった。もし宇宙でああいう状況になったら、日本人ならこれは神の思し召しだ、とか、自己責任だと諦めちゃうけど、アメリカ人のポジティブさと実用主義が一番よく出てる映画ですよね。リドリーはイギリス人ですが。宇宙飛行士のマット・デイモンが独身というのもいい。妻や子供のために生きるじゃなく、絶望的な状況でも僕は生きる、という人。死なない為に何をするか、というとジャガイモを植える。ジャガイモの底力を感じました(笑)。

山内:私は自活ものが好きなんですよ。自給自足までいかなくても、知らない土地で一から生活するとか。『ブルックリン』も『オデッセイ』も私のなかでは同じ自活映画で、自分で衣食住を整える感じがすごく好きでした。『オデッセイ』は深刻な状況を陽気にとらえてる、マットのアメリカ野郎感もよかった。なぜか笑って見られるし、見終わると人類愛に満たされる。

山崎:誰かのためじゃなく、自分のために生きる。それが『オデッセイ』のよさですよね。

――デヴィッド・ボウイの『スターマン』をフルコーラスで流したのもよかった! 明るいシーンなのに、あそこはボウイファンとしては滂沱の涙でした。そして自活といえばレオナルド・ディカプリオが念願のオスカーを受賞した『レヴェナント~蘇えりし者』も。

山内:見てないんですー。

山崎:究極の自活映画なのに(笑)。これはエマニュエル・ルベツキのカメラを含め、テレンス・マリックのスタッフと手法がいかに優秀かがわかる。監督のイニャリトゥの功績は物語をのっけたのと、レオのためにルーカス・ハースをキャスティングしたこと。ルーカス・ハースは本当にレオのコバンザメ(笑)。小さい役で出してもらって、レオのお付きとしてやってくるんですよ。待ち時間に何もやることがないレオのための、プレステ要員という感じがすごくする(笑)。ただレオも悪くないんだけど、クリスチャン・ベールだったらもっとぼろぼろに痩せてくれたと思う。

山内:レオ、確かに顔が丸い。

Text: AYAKO ISHIZU

  • 山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。

  • 山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。

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