山崎まどか×山内マリコ“2016年、私たちが愛した映画のはなし”
2016/12/05(月)
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写真上/『さざなみ』(公開中)、写真下/『94歳のニューヨーカー アイリス・アプフェル』(DVD発売中) (C)The Bureau Film Company Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014 (C) Agatha A. Nitecka Photo: Aflo

年を重ねれば重ねるほどカッコいい年上女優たちが熱い!

――『さざなみ』など、大人というか年配のヒロイン映画も増えましたね。

山内:私はこの手のシャーロット・ランプリング映画がすごく好きなんです。『まぼろし』とか。

山崎:ひらがな4文字系(笑)。

――監督も設定も違うのに、なぜか不穏な空気が流れてくる4文字シャーロット映画ですね。

山内:はい(笑)。リタイア後の夫婦の穏やかな暮らしが、約50年前に氷山で死んだ夫の恋人の遺体が見つかったことで瓦解。夫の心が、死んだ恋人の方へいってしまって。懊悩するランプリングが知的で美しいです。

山崎:『17歳』もそうだったけど、ランプリングが出てくるだけですごい締まる。

山内:説得力がすごいですよね。顔のしわだけで全部を見せてしまうような。ラストカットももちろんランプリング先生のどアップで、そこから感じ取ってね、という映画です。あの目ですべてを語ります。

――年をとっても力のある三白眼。ランプリングは今年で70歳ですって。

山内:この年代でコンスタントに主役をはれる女優さんは、ランプリングとイザベル・ユペールくらいじゃないかと。

山崎:ユペールなんて大ブレイクしてますよ。今のほうが可愛くなっている。

山内:『8人の女たち』のときは年増で性的魅力のない役をやってたけど、今はかわいげがあるんですよね。

――ユペール先生、ご本人は大迫力ですよ(笑)。気取らないし、とても素敵でしたが。

山内:イギリスのランプリング、フランスのユペール映画は見逃すな、ですね。私、年配の女性が主人公の映画が好きなんですよ。彼女たちの日常、着ているものや、部屋の描写を観ているだけで十分なんです。

山崎:豊かな大人の女性だね。

山内:アメリカだと、『幸せのまわり道』のパトリシア・クラークソンとか。

山崎:自分が年を取るにつれ憧れる女優が、どんどん年上になっていくんだよね。

山内:そういう憧れの存在は、いっぱいいてほしいんです。50代以上で集客力もあって、企画も通る女優というのはすごい貴重。

——ユペールの『アスファルト』もよかったですよね。

山内:私、あれ大好き! なんでエルの30本に入ってないんですか?!

山崎:『母の残像』もよかったし、ユペール最近すごく仕事している。小忙しいというか(笑)。

――来年公開になるユペールの『ELLE』は怖いですよー(笑)。監督はポール・バーホーベンだし。

山内、山崎:見たい!!

山崎:バーホーベンにユペールなんて、鬼に金棒の鬼畜(笑)。

山内:『94歳のニューヨーカー アイリス・アプフェル』もよかったです。

山崎:これは『グレイ・ガーデンズ』のメイゼレス兄弟の兄アルバートの遺作だったので、思い入れがあります。アイリスも本当にニューヨークの女の人。ファッションセンスもすごくいいし。

山内:老いを描いている映画を見ると、心構えができるというか、怖くなくなる。

――年を取ることをネガティブに捉えない映画ですね。

山内:もう、そういう映画しか見たくない!(笑)。

Text: AYAKO ISHIZU

  • 山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。

  • 山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。

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