山崎まどか×山内マリコ“2016年、私たちが愛した映画のはなし”
2016/12/05(月)
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写真上/『ゴーストバスターズ』(2016年12月21日DVD発売)、写真下/『エクス・マキナ』(DVD発売中) photo: Aflo 

既存の女性像を覆す、女性パワーあふれる映画に喝采!

――シネマ大賞候補は30本ありますが、『ゴーストバスターズ』をはじめ、今年は既存の女性像を打ち破る映画がたくさんありましたね。

山崎:『ゴーストバスターズ』はひたすらよかったので、もうこれが1位でいいと思う。

山内:二人一緒に試写を見ましたね。面白かったー。

山崎:ケイト・マッキノンは私が今一番面白いコメディエンヌだと思っていて。

山内:かっこよかったですね。

山崎:理屈抜きで本当に面白いし、新しいですよね。そしてちゃんとオリジナルの『ゴーストバスターズ』への愛がある。オリジナル愛が強すぎる男たちからバッシングがあったりもしたけれど、オリジナルより優れているところもあった。

――あのバッシングの強さには、ヒラリー・クリントンが大統領になれなかった土壌を感じましたね。特に女性で黒人というレスリー・ジョーンズへの風当たりが強くて。

山崎:レスリー・ジョーンズはオリジナルの黒人キャストよりもずっといることに意味があったし、いろんな意味でパワーアップしていた。4人組のアクションも評価してほしいです。

山内:女優が体を張って何かと戦ってるシーンは、不思議と胸が熱くなりますね。男優の場合はジャッキー・チェンレベルじゃないとぐっとこないけど。

山崎:『エクス・マキナ』もよかったですね。AIの話でSF的にはそれほど面白くないんだけど、男によって理想化された女性がそれを裏切るというテーマはすごく今っぽい。アリシア・ヴィキャンデルってすごく低温な感じがする。

――北欧出身だからですかね。ものすごい偏見ですが(笑)。

山内:わかります。ペネロペ・クルスに似ているのに、情熱を感じない。

山崎:アリシアは、『リリーのすべて』じゃなく『エクス・マキナ』でオスカーを取ってほしかったと思うくらい、よかったですね。『ルーム』で主演女優賞を取ったブリー・ラーソンも洗練されていてすごくよかったけど、あれは子供の目線で話が進むんですよね。脱出できてからが本題で、二次被害の部分。

――レイプされた娘が生んだ孫が受け入れられないという、男親のダメさもきちんと描かれていて。ウィリアム・H・メイシーがぴったりでした。

山崎:いろんな矛盾を過不足なく描いた、良い映画でしたね。

Text: AYAKO ISHIZU

  • 山崎まどか/文筆家、翻訳家。映画、本、音楽などカルチャー全般に精通し、「乙女カルチャー」の第一人者。著書に『女子とニューヨーク』『オリーブ少女ライフ』『ヤング・アダルトU.S.A.』(共著)など。翻訳書に、タオ・リン『イー・イー・イー』、『ありがちな女じゃない』など。

  • 山内マリコ/作家。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞。’12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著書に『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『かわいい結婚』など。最新刊は長編小説『あのこは貴族』。’13年の『アズミ・ハルコは行方不明』が映画化され現在公開中。

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