2017年のカンヌ映画祭を魅了したふたつの快作が日本公開!
是枝裕和監督の『万引き家族』が日本映画として21年ぶりに最高賞であるパルムドールを受賞した今年のカンヌ国際映画祭。カンヌで上映された作品はこれから1年くらいかけて世界中で順次公開されていくのだけれど、去年のカンヌで話題になった2作品も6月に日本公開!
1本目は、脚本賞&男優賞をW受賞したリン・ラムジー監督の『ビューティフル・デイ』。元軍人のジョー(ホアキン・フェニックス)は、行方不明者を探すスペシャリストとして生計を立てているが、ある日、組織に囚われている州の上院議員の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)を取り戻す仕事を請け負う。だが、任務を成し遂げた彼は、依頼主の自殺を知る……。
強靭な肉体とは裏腹にトラウマを抱え、死のオブセッションに悩まされる中年男と、心が壊れたかのように反応のうすい少女の間に芽生える絆。フィルム・ノワールタッチの映像美、ブラックユーモアに溢れるセリフ、心に染みるようなヒューマンなストーリーテリング、レディオ・ヘッドのジョニー・グリーウッドによるキレのいい音楽。ジャンルを飛び越えた要素が重ね合わされ、新しい映画体験を呼び覚ます本作は、まさに寡作ながら作品ごとに評価を高めてきたリン・ラムジー監督の最高傑作だ。怪演俳優ホアキン・フェニックスのパフォーマンスも圧巻です。
2本目は、巨匠ロマン・ポランスキー監督の『告白小説、その結末』。アウト・オブ・コンペティション部門で上映されたこの作品は、フランスの人気作家デルヴィーヌ・ドゥ・ヴィガンの「デルヴィーヌの友情」の映画化。
自殺した母を題材にした小説がベストセラーとなり人気作家となったデルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)は、中傷する匿名の手紙を受け取るようになる。次作が書けないでいる中、ファンだと名乗る女性エル(エヴァ・グリーン)と出会う。著名人のゴーストライター(代筆家)のエルは、次第にデルヴィーヌの生活の中に入り込み、彼女を支配し始める。一方で、デルフィーヌはエルの悲劇的な半生を知り、その話を元に小説を書き始めるが……。
映画化されたスティーヴン・キングの小説「ミザリー」にも似た、作家とファンの間に起こる危うい関係を孕みながら、過去、現実、野心、妄想が交錯する心理ミステリーだ。ふたりの個性派女優が見せる狂気に戦慄が走る。
Text: Atsuko Tatsuta
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『ビューティフル・デイ』2018年6月1日(金)~公開
http://beautifulday-movie.com/『告白小説、その結末』2018年6月23日(土)~公開
https://kokuhaku-shosetsu.jp/