ベッドで言ってみたい名台詞6
「イエス」
Yes.
(『キリング・ミー・ソフトリー』より)
ヘザー・グラハム演じる平凡な女性アリスが謎の男アダムと出会い、激しいセックスを重ねていくうちにお互い心から愛し合う仲に。やがて二人が結婚した頃、実は彼と過去に付き合った女性たちが皆行方不明になっていることを彼女が知ってしまう、というぞっとするストーリー。官能的な映画というと必ず名前があがる本作のセックスのシーンは、どれも長く丁寧に撮られていますが、実はほとんど会話はなし。言葉が無効になるほど激しく、究極の快楽を求める2人は息を荒げながら貪るようにお互いの身体を弄ります。
最も印象的なシーンは結婚初夜。アダムは長いリボンを使ってアリスの首を絞めたり緩めたりしながら暖炉の前で愛し合うのですが、プレイの直前、彼は「僕のことを信じられる?」と質問、それに「イエス」と答えるアリス。呼吸のコントロールをすべて彼に委ね、何も考えずに快楽に没頭するという合意なのですが、無防備な姿で相手に体重を委ねるセックスという行為自体がそもそも、彼らのしていることと根本的には似ているのかもしれません。難しい言葉を羅列せず、これ位シンプルに「信じる?」「イエス」のやりとりをするだけでもシチュエーションによっては充分官能的。
Text: Suzumi Suzuki Photo: Aflo
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鈴木涼美/社会学者、作家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。記者として在籍した日本経済新聞社を退社後、執筆業を中心に活動。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)や『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)、『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)など。2017年8月8日には新著『おじさんメモリアル』(扶桑社)を発売。同名小説を原作とした映画『身体を売ったらサヨウナラ』が絶賛上映中。
Twitter:@Suzumixxx
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