ベッドで言ってみたい名台詞4
「それからくるぶしは好き?」
et les chevilles, tu les aimes?
(『軽蔑』より)
人気絶頂の頃のブリジッド・バルドーの魅力を堪能できる作品『軽蔑』。ゴダール監督作のなかでは、皮肉や台詞がわかりやすいのか、当時から好き嫌いがかなり分かれる作品であるものの、冒頭の売れない劇作家ポールと彼が溺愛する美しすぎる妻カミーユのベッドシーンは映画史に残る名場面。
劇作家ポールは、プライドを捨てた下仕事をして妻の心を引き止めようとしたけれど、それが逆効果でより一層気持ちは離れていくばかり。ベッドシーンでは、彼のあまりにわかりやすい愛情表現をいちいち妻カミーユが小悪魔的に言葉責め。「私の足、鏡で見える?」「綺麗?」「お尻は可愛い?」「私の胸好き?」「私の乳房と乳首はどちらが好き?」。
彼にとってはあまりに自明な答え、そして彼女もそれを承知の上、「完全に好きなのね」と呟く視線はどこか満たされてなさそうだけど妖艶。女性であれば、ベッドに一緒に入る男性には全身愛されたいはず。しかし漠然と「私のこと好き?」と聞いてもつまらない答えになるのは目に見えること。そこで、くるぶしなんて普段は存在すら忘れている身体のかけらチョイスし、更に相手を翻弄させるテクニックは見習いたいところ。
Text: Suzumi Suzuki Photo: Aflo
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鈴木涼美/社会学者、作家。1983年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。記者として在籍した日本経済新聞社を退社後、執筆業を中心に活動。著書に『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)や『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)、『愛と子宮に花束を』(幻冬舎)など。2017年8月8日には新著『おじさんメモリアル』(扶桑社)を発売。同名小説を原作とした映画『身体を売ったらサヨウナラ』が絶賛上映中。
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