特集
2016/11/15(火)
ELLE CINEMA AWARDS 2016

映画ジャーナリストが選ぶ、2016年のベスト映画【後編】

エルでおなじみの映画ジャーナリスト11名が、部門別に2016年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届け。本日は後編5ジャンルを公開!

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『ルーム』DVD発売中 (C)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

ママン映画BEST3/高山亜紀さん

『ルーム』
小さな部屋に暮らすママと息子のジャック。この部屋で生まれ育ったジャックにとって、そこは世界のすべてだ。彼の5歳の誕生日、ママは脱出を試みる。10代で監禁された彼女にとっては7年ぶり、ジャックには初めての外の世界。小さな部屋はまるで、おままごとのように危ういが、愛に溢れ、美しい。一方、現実の世界は自由だけれど、そこには危険も不安も溢れている。そこで生きなければならない大人の意外な脆さと子どもの思わぬ逞しさ。子役のジェイコブ・トレンブレイの反応が実に自然で、主演のブリー・ラーソンの演技だけではなかったろう力に感心。最初から衝撃的な展開で観る者の気持ちを鷲掴みにする。今年一番、いや数十年に一度の秀作。

『マイ・ベスト・フレンド』
ミリーとジェスは幼い頃からの大親友。ところがある日、ミリーに乳がんが見つかる。トニ・コレットとドリュー・バリモアが初共演とは思えぬ息の合った親友っぷりを見せる女子の友情物語。演技派コレットは女性として生きることを謳歌しているからこそ、病気のために髪も胸も失う悲しみに打ちひしがれるミリーを熱演している。バリモアも産後間もないにも関わらず、作品のために不妊に悩むジェス役を引き受け、リアルすぎる出産場面を披露。母親の病気を幼いなりに理解しようとする子どもたちの反応にもドキリ。自身が乳がんを患ったという脚本家の如実な体験が作品にきちんと反映されていて、薄っぺらい闘病ものになってないところが素晴らしい。

『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』
イギリスのシンドラーと呼ばれ、第2次大戦開戦前のチェコスロバキアで、ナチス・ドイツから迫害されないためにユダヤ人の子ども669人を救出したニコラス・ウィントン。彼が行った軌跡を追うドキュメンタリー。ともかく子供だけでも助けたい。その一心で、泣く子を引き離し、異国へと向かう電車に乗せる親たち。それが子供たちの運命を大きく変えてゆく。幼い子たちが親もなく、異国で暮らす不憫さ。それでも、命とは引き換えられない。一瞬の迷いも許されなかった当時の親たちの気持ちを想像するだけで、胸が張り裂けそう。現在では、ウィントン氏に影響された子どもたちが自分たちにできることからと、ボランティア活動をしている姿も頼もしい。

●ベスト男優
トム・ハンクス(『ブリッジ・オブ・スパイ』)
『ハドソン川の奇跡』『インフェルノ』と今年は彼の年といってもいいほど、主演映画が公開された。なかでも、『ブリッジ・オブ・スパイ』が秀逸。家では普通のお父さんが、実は、世界を股にかけ、国の未来のために、命を落とす危険をも顧みず、大活躍をしていた! なんともかっこいい、尊敬すべきお父さん。映画もよかった。

●ベスト女優
ブリー・ラーソン(『ルーム』)
アカデミー賞主演女優賞受賞直後に来日。取材した際の女優オーラが忘れられない。彼女の話から、主演女優にとって、いかに演技以外の役割も重要か、思い知らされた。劇中では子役のジェイコブ・トレンブレイの名演に目を奪われがちだが、それは彼女が信頼関係を築き、引き出したもの。そこも含めてのオスカーなんだと納得。

  • 高山亜紀/エル・オンラインで連載中のELLEMENシリーズでは今年もたくさんの方々に取材。うらやましがられまくりの一年でした。来年も引き続き、イケメンに会いに行きます!

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