特集
2016/11/14(月)
ELLE CINEMA AWARDS 2016

映画ジャーナリストが選ぶ、2016年のベスト映画【前編】

エルでおなじみの映画ジャーナリスト11名が、部門別に2016年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届け。

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『裸足の季節』公開中 (C)2015 Cinema-vistamar filmproduktion -INEMA- UhlandFilm-bam film-kinology

青春映画BEST3/細谷美香さん

『裸足の季節』
トルコ出身の女性監督が描く、封建的な思想に支配された小さな村の物語。両親を失って以来、封建的な叔父と祖母の家に身を寄せている5人姉妹が強制的に嫁がされていくなか、末っ子が脱出を企てます。彼女たちが置かれているのは極端に理不尽な環境かもしれないけれど、女であるだけで自由に生きられないと感じる瞬間が存在するのは、私たちが生きている世界も同じ。レジスタンスを描きながら、風に戯れるロングヘアや強い意志を感じさせるキリリとした太眉を光とともに映し出す映像が美しく、少女の伸びやかな存在を祝福しているかのよう。ままならない現実を生きる、すべての女子たちへのエールのような青春映画です。

『シング・ストリート 未来へのうた』
不況下のダブリン、不良だらけの公立校に転校を余儀なくされた少年、コナーが主人公。両親はケンカばかり、学校ではヤンキーにイチャモンをつけられるどん詰まりの日々のなか、彼の毎日を変えてくれたのはデュラン・デュランをはじめとする80年代のイギリスの音楽と、はじめての恋! メイクやファッションをすぐに真似してなりきってしまう思春期ならではの行動も、みんなで協力してMVを撮影するシーンの手作り感も、すべてが気恥ずかしくも最高にチャーミング。さりげなく弟を導くコナーの兄貴の存在が、ちょっと切ないスパイスになっています。『はじまりのうた』のジョン・カーニー監督が自伝的要素をちりばめ、甘酸っぱい初恋と友情、未来への思いを詰め込んだ青春音楽映画。 

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』
80年、野球の推薦生として大学に入学することになったジェイク。野球部の寮に入るとちょっと変わった先輩たちの洗礼を受け、新学期がスタートするまでの3日間がはじまった!リチャード・リンクレイター監督が、高校生たちの夏休み前の一夜を描く『バッド・チューニング』、ひとりの少年を12年間に渡って撮影して完成させた『6才のボクが、大人になるまで。』の精神的続編と語っている作品。ハチャメチャなバカ騒ぎを繰り広げる体育会系男子たちは青春の終わりを心のなかでは予感しているのか、それともしていないのか……。大人としての人生がはじまるほんの手前。きっとあとで振り返ればかけがえがなかったと思える愛おしい日々が描かれています。

●ベスト男優
リリー・フランキー(『SCOOP!』ほか)
『SCOOP!』では福山雅治とのブロマンスを繰り広げ、『お父さんと伊藤さん』ではさりげなく歳の差恋愛をするフェアで謎めいた中年を、『聖の青春』では伝説の棋士と親子のような絆を築く師匠に。どんなジャンルでもごく自然に息をして、男とも女とも相性がいいリリー・フランキー。今年の最優秀助演男優賞だと思います!

●ベスト女優
小松菜奈(『溺れるナイフ』ほか)
いま、この人から一瞬たりとも目を離してはいけないのだ! という吸引力がある、時代に愛されている女優。『溺れるナイフ』の万能感とそれが崩れてからの身体を持て余しているかのようなあやうさ、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の逆光が似合う美少女ぶり。かわいさのバリエーションの豊かさにクラクラして、ひれ伏したくなりました。

  • 細谷美香/映画ライター。今年は日本映画の力作が多く、監督や役者さんたちへのインタビューで貴重なお話をうかがえたことがありがたかったです。

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