特集
2016/11/14(月)
ELLE CINEMA AWARDS 2016

映画ジャーナリストが選ぶ、2016年のベスト映画【前編】

エルでおなじみの映画ジャーナリスト11名が、部門別に2016年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届け。

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『ボーダーライン』公開中 photo: aflo

サスペンス部門BEST3/平田裕介さん

『ボーダーライン』
メキシコ麻薬戦争の渦中に放り込まれた、FBIの女性捜査官。男どもがたじろぐほど彼女が活躍する痛快な物語になるかと思いきや、まったくそうならない。描かれるのは、とてつもなく強大で得体の知れない事象に対峙してしまった人間の恐怖と無力感。それじゃあ面白くないのでとは思いきや、これまたそうならない。『複製された男』『プリズナー』で、不穏や不安といったものを極上のサスペンスとスリルへと昇華させた名手ドゥニ・ヴィルヌーヴが本作でもその手腕を大発揮。ヒロインと観る者の胸中を同期させ、心臓を時に鷲掴みにし、時にザワ~となぞるのだ。観終わった後に安堵してしまうくらいのドキドキを久々に堪能させてもらった。

『エクスマキナ』
大自然に囲まれた屋敷に暮らす、IT界の天才。彼に開発され、ガラス張りの部屋に閉じ込められる人工知能を搭載した美女型ロボ。そこへ彼女のテストを行う青年が現れたことで生じる波紋を、静かで異様なまでに張りつめたタッチで描き切る。なにはともあれ、ロボットに扮したアリシア・ヴィキャンデルの魅力に尽きる。顔、胸部、臀部以外はスケルトンでありながらも艶めかしい姿もさることながら、少女のような無垢な表情、それとは真逆の冷徹な表情の双方を使い分けて青年を翻弄するファムファタールな雰囲気にヤラれた。男性が無意識に放つ暴力的な“圧”にさらされる世の女性たちの憤怒を見つめたドラマとしても機能させている点も見事!

『イットフォローズ』
セックスを媒介に、他人には姿の見えない異形が見えてしまう怪現象が感染。しかも、異形に触れられると死んでしまう。『リング』の影響をもろに受けている作品なのだが、そこへティーンの頃に誰もが抱えるいいようのない不安や焦燥を練り込んだことから一筋縄ではいかぬ面白さと恐ろしさをはらんだホラーとなった。もちろん恐怖描写も徹底していて、友人がはしゃぐ砂浜や学生たちがダベっている校庭や校舎の奥からヒロインめがけてヨタヨタと迫る異形の姿には身の毛がよだつこと必至。また、恐怖に震えるヒロインを救おうと、異形と張り合うようにして彼女をどこまでも“フォロー”して支えていく幼馴染みの青年の真摯な愛と男気に泣かされた。

●ベスト男優
ベニチオ・デル・トロ(ボーダーライン)
バカボンのパパみたいになって精彩を欠いていたが復活。狂気、憤怒、怨嗟が詰まった接近厳禁な男を、目眩がするほどの存在感を放って熱演して持っていきまくり。終盤でのエミリー・ブラントとの対峙は、もはやホラー!

●ベスト女優
ブレイク・ライブリー(ロスト・バケーション)
惜しげもなく披露しまくるゴージャスな肢体もさることながら、満身創痍になりながら人喰いザメと戦うガッツ溢れる姿に惚れ直しました! ガチなアクションでもいけそうな、新たな可能性を感じさせてくれた。

  • 平田裕介/映画ライター。今年も洋画は絶好調だったが、それ以上に邦画が傑作ジャンジャンバリバリだったなぁと振り返る日々。『テラフォーマーズ』『淵に立つ』『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』に燃えて、震えて、泣かされました。来年は『エイリアン・コヴナント』『ローガン』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol. 2』に期待!

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